新世界秩序
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新世界秩序/New World Orderは、アラーラの断片ブロック[1]から導入された開発部の基本方針。略称はNWO。2011年12月に公式記事「New World Order/新世界秩序」で紹介された。
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解説
クリーチャー — 蛇(Snake)
到達
(6)(緑):怪物化4を行う。(このクリーチャーが怪物的でない場合、これの上に+1/+1カウンターを4個置く。これは怪物的になる。)
伝説のクリーチャー — ハイドラ(Hydra)
(X)(X)(緑):怪物化Xを行う。(このクリーチャーが怪物的でないとき、これの上に+1/+1カウンターをX個置く。これは怪物的になる。)
世界を喰らう者、ポルクラノスが怪物的になったとき、あなたの対戦相手がコントロールする、望む数のクリーチャーを対象とする。世界を喰らう者、ポルクラノスはそれらにX点のダメージをあなたの望むように分割して与える。それらの各クリーチャーは、それぞれのパワーに等しい点数のダメージを世界を喰らう者、ポルクラノスに与える。
新世界秩序とは、「マジックを新しく始めるプレイヤーにとっての参入障壁を小さくする」という目的のために設定された、「コモンのカードを複雑にしすぎないようにする」というデザイン方針である。
カードやメカニズムがあまりに複雑すぎることは、初心者の挫折に繋がる。かといってポータルのように過度な単純化を押し進めれば、経験豊富なプレイヤーには物足りないゲームになってしまう。そこで開発部は稀少度に目をつけた。あまり多くのブースターパックを購入することができない初心者にとって、カード資産のほとんどはコモンである。そのためコモンを単純なものにしつつ、アンコモン以上の稀少度に複雑なカードを置けば、両方のプレイヤーを満足させることができると考えたのである。
これはコモンから複雑さを完全に取り除こうとするものでもない。そうするだけの理由があれば、コモンでも複雑なカードを作ることはできる。ただし1つのセット内のコモンの複雑さの総量には上限があり、無尽蔵に作れるわけではない。したがって個別のカードのデザイン以上に、多数のカードに関わるメカニズム(キーワード能力、キーワード処理、能力語など)のデザインがこの方針の影響を強く受けている。
例えばテーロス・ブロックの怪物化では、コモンのクリーチャーはほとんどが常磐木キーワードと怪物化を行う起動型能力だけを持つ、シンプルなカードとなっている。一方でアンコモン以上のクリーチャーは怪物化を行う能力に加え、自身が怪物的になる/怪物的であることを参照する能力を持っており、中には世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eaterのようにかなり複雑なカードも含まれている。
導入の経緯
新世界秩序は時のらせんブロックとローウィン・ブロックの反省から作られている[2][3]。
「時間」をテーマとする時のらせんブロックはマジックの過去と未来から膨大な数のメカニズムを登場させており、待機のようにそれ自体が複雑なメカニズムも存在していた。特に再録メカニズムはほとんどのプレイヤーがすでに知っているものであると見なされていたが、時のらせんブロックからマジックを始めるプレイヤーにとってはそうではなかったのだ。
続くローウィン・ブロックはタイプ的をテーマとしており、ローウィンで種族のクリーチャー・タイプ、モーニングタイドで職業のクリーチャー・タイプに焦点を当てるという手法を取った。しかしこれは、ゴブリン・戦士とゴブリン・シャーマンとツリーフォーク・シャーマンがそれぞれ対応するタイプ的支援を受けるという、容易に把握できない盤面を作り出すことになってしまった。ローウィン・ブロックは時のらせんブロックの反省に立って個々のコモンのカードの複雑さを下げていたが、複数のカードが組み合わさったときの複雑さはむしろ上がっていたのだった。
すなわち、複雑さには異なる種類のものがあり、それぞれを監視しなければならないということである。この教訓を踏まえ、「新世界秩序」と呼ばれる方針が作られることとなった。
複雑さの分類
開発部は、複雑さを#理解上の複雑さ/Comprehension Complexity、#盤面の複雑さ/Board Complexity、#戦略的複雑さ/Strategic Complexityの3つに分類している[2][4]。
理解上の複雑さ
クリーチャー — ビースト(Beast)
待機5 ― (緑)(このカードをあなたの手札から唱えるのではなく、(緑)を支払うとともにそれを時間(time)カウンターが5個置かれた状態で追放する。あなたのアップキープの開始時に、時間カウンターを1個取り除く。最後の1個を取り除いたとき、それをそのマナ・コストを支払うことなく唱える。それは速攻を持つ。)
5/5クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
変異(青)(あなたはこのカードを、(3)で2/2クリーチャーとして裏向きに唱えてもよい。これの変異コストで、これをいつでも表向きにしてもよい。)
1/1これは個々のカード(あるいは個々のメカニズム)を、プレイヤーが一読して正しく理解できるかどうかに関する複雑さである。時のらせんブロックで問題となった。
さらに細分化すると、以下のようなものがある。
- 初心者には馴染みの薄い用語が使われている(例:ルール文章に「スタック」と書かれている混沌の掌握/Grip of Chaos)。
- カードの挙動を理解するのが難しい(例:生き写し/Dead Ringers)。
- 多くの手順が書かれており、文章が長く煩雑である(例:待機)。
- 挙動自体は理解できるが、なぜそのようなデザインになっているのか理解しづらい(例:軽蔑する利己主義者/Scornful Egotist、空虚自身/One with Nothing)。
盤面の複雑さ
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
(T):クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。放蕩紅蓮術士はそれに1点のダメージを与える。
1/1クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
オドリックの十字軍のパワーとタフネスは、それぞれあなたがコントロールするクリーチャーの総数に等しい。
*/*これは複数のパーマネントが戦場に存在するとき、それらの相互作用をプレイヤーが把握できるかどうかに関する複雑さである。ローウィン・ブロックで問題となった。
多くのパーマネントが並ぶほど盤面は複雑になっていくが、少数のパーマネントしかなくても、そのカードの能力次第では盤面の複雑さが問題になる可能性がある。例えばティムは任意のタイミングで任意のクリーチャーにダメージを与えることができるため、1体存在するだけでも様々な可能性を考慮に入れなければならなくなり、戦闘の計算が難しくなる。またオドリックの十字軍/Crusader of Odricのような自軍クリーチャーの数を参照してP/Tが変わるクリーチャーは、自身が受ける戦闘ダメージと自軍クリーチャー数の減少を同時に考えなければならないため、やはり戦闘の計算が難しい。
戦略的複雑さ
インスタント
あなたのライブラリーの一番上からカードを5枚公開する。対戦相手1人はそれらのカードを2つの束に分ける。あなたは一方の束をあなたの手札に加え、もう一方をあなたの墓地に置く。
これはそのカードの効果を最大限に発揮するような使い方を、プレイヤーが正しく選択できるかどうかに関する複雑さである。「唱えられるようになったらすぐに唱えるべきか、それとも温存するべきか?」などの、いわゆるプレイングに関する複雑さがこれに当たる。
戦略的複雑さは、新世界秩序の制限を受けない。なぜなら、戦略的複雑さはマジックの知識と経験を深めていくにつれて意識するようになるものであり、初心者のうちはそれが複雑であることに気づかない、すなわち新規参入の障壁にならないからである。
- 「一見すると単純だが、その使い方に気づくと複雑であると分かるカード」「初心者は気づかないような複雑さを内包したカード」はレンズ状/Lenticularのカードと呼ばれる(見る角度によって絵柄が変化する印刷物、レンチキュラー(Lenticular)に由来する)。理解上の複雑さや盤面の複雑さが低く、戦略的複雑さが高いことは、良いレンズ状のカードであるための第一条件である[4]。
複雑さの変化
イコリア:巨獣の棲処では変容という複雑さの高いメカニズムが中核となり、そこから示唆的デザイン/evocative designと呼ばれる、複雑さを正面に出す代わりに芳醇なフレーバーによって理解させるというデザイン手法が考え出された。同セットはその他にもキーワード・カウンターや相棒など独自の複雑さを持つメカニズムが同居しており、セット全体が複雑になりすぎるのではないかという懸念もあったが、複雑さの上限を引き上げる実験として世に出ることになった[5]。
この実験の結果、プレイヤーは以前よりも高い複雑さを受け入れたことが分かり[6]、以降のセットでは意図的に以前よりも複雑さが引き上げられている。こうした変化の背景には、コンピュータが複雑なルールを処理してくれるMagic: The Gathering Arenaと、友人とコミュニケーションを取りながら教えてもらえる統率者戦の2つが初心者の導入口として確立されたこともある[7][8]。
その他
- 新世界秩序は誤解されやすい。特に新世界秩序は複雑さに関する方針であり、カードパワーとは無関係である点に注意が必要[9][10]。
- マスターズ・シリーズなどの最初から初心者向けに作られていないサプリメント・セットには、新世界秩序は適用されない[11]。例えばコンスピラシー:王位争奪には、自身が怪物的であることを参照する常在型能力を持つコモンのクリーチャーが収録されている。
- Lv系カードなどを擁するエルドラージ覚醒はコモンが複雑すぎ、新世界秩序を逸脱してしまったセットとされる[12]。
- 新世界秩序(New World Order)とは、大国間のパワーバランスが変化した後の新たな国際秩序のことであり、特に冷戦終結後のそれを指す。マジックのデッキ名、nWoの由来にもなっている。
- 日本語版公式サイトmtg-jp.comでMaking Magicの翻訳記事が掲載されるようになったのは2012年からであり、過去のものは基本的に翻訳されていないが、「New World Order」は公式記事内で繰り返し引用される重要な記事であることから、2012年12月24日、特別に日本語訳が掲載された。
- 2013年4月1日には、新世界秩序に代わる新たな方針として「New New World Order/新・新世界秩序」が発表された。記事内では「コモンのクリーチャーのP/Tはすべて正方にする」「コモンのインスタントは作らない」など極端な単純化の方針が打ち出されているが、これはもちろんエイプリル・フールのジョークである。
脚注
- ↑ Blogatog FAQ(Mark Rosewaterブログ)
- ↑ 2.0 2.1 New World Order/新世界秩序(Making Magic 2011年12月5日 Mark Rosewater著)
- ↑ Because Salt Makes Mistakes Taste Great/塩が失敗を美味しくするから(Making Magic 2016年5月9日 Mark Rosewater著)
- ↑ 4.0 4.1 Lenticular Design/レンズ状のデザイン(Making Magic 2014年3月31日 Mark Rosewater著)
- ↑ The Grand Experiment/世紀の大実験(Making Magic 2020年5月25日 Mark Rosewater著)
- ↑ State of Design 2020/デザイン演説2020(Making Magic 2020年6月17日 Mark Rosewater著)
- ↑ Odds and Ends - Kamigawa: Neon Dynasty/こぼれ話:『神河:輝ける世界』(Making Magic 2022年2月28日 Mark Rosewater著)
- ↑ Odds and Ends: Streets of New Capenna/こぼれ話:『ニューカペナの街角』(Making Magic 2022年5月9日 Mark Rosewater著)
- ↑ Developing Commons/コモンのデベロップ(Latest Developments 2014年10月3日 Sam Stoddard著)
- ↑ Complexity Creep/複雑さの浸入的増大(Latest Developments 2017年2月24日 Sam Stoddard著)
- ↑ Not-so-New World Order/新(というわけでもない)世界秩序(Latest Developments 2015年5月8日 Sam Stoddard著)
- ↑ Preparing for Battle, Part 1/戦乱に向けて その1(Making Magic 2015年9月7日 Mark Rosewater著)