メタゲーム
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メタゲーム(Metagame)
大会では、1人に勝つだけでは駄目で、何人もの対戦相手に勝つ必要がある。 そのため、「大会で多数が使用しているデッキ」に対して効果的なカードを選んで使うと、勝率を上げやすい。 その大会で使用されるデッキ分布を予想からカードを吟味するデッキ構築も、ゲームプレイングに劣らず重要なわけだ。
たとえば、緑のクリーチャー・デッキが多数を占めるなら、冬眠/Hibernationの標準装備や除去の満載が有効である。 周囲に強力なエンチャントが多いとわかっていれば、黒単色のデッキでも他の色をタッチすることで対策を立てることもできよう。 他の人が考える対策の裏をかくこともできるだろう。→ アグレッシブ・サイドボーディング 多数派のデッキは一種類ではないことも多い。とはいえ対策カードばかりを入れて自分のデッキのコンセプトを崩しては本末転倒。
そういった様々なことを考え、勝率が高くなるようにデッキやサイドボードを組むことが「メタゲーム」である。 上の話を単純化し、「仮想敵」とか「周りや世間で流行っているデッキ」とか「それらに勝てるようなデッキ構築」という意味でも使われる。
略して「メタ」とも言う。接頭辞 meta- は「高次の」「変化した」といった意味。
こういった概念は、ゲーム理論においても用いられる。「囚人のジレンマ」のような単純なモデルでさえ、判断に用いる情報が増加すると環境が特定の戦略に収束しない(言い換えると、最強の戦略が存在しない)ことが示されている。
- 「山札」に当たる「デッキ」を自由に構築してよいという、トレーディングカードゲームというジャンルならではの現象と言える。
- 「この大会では青のデッキが多い」といった程度の情報でも十分メタゲームになる。
この場合は、例えば島渡りを活用できるフィッシュが有効な選択肢であると言えるだろう。
メタゲームは「流行」に左右される要素が大きいために、時期によって「主流メタ」がぐるぐる入れ替わることも珍しくない。 メタゲームが入れ替わった結果、場合によっては再び似たような状況に戻ってくることもある。俗に「メタが一周する」「メタが一巡する」という。 この循環はしばしば「食物連鎖」や「適者生存の法則」に例えられる。環境に適応することの出来た種のみが存続を許されるのが大自然の掟である。
- 具体例を示そう。以下のリシャーダの港/Rishadan Portを巡るメタの変遷はThe Finals00(2000年12月)から日本選手権01(2001年6月)の間に実際に起こったものである。
「リシャーダの港が流行する」 →「リシャーダの港への対策カードを入れるのが流行する」 →「相手の対策カードを無駄にさせるため、リシャーダの港を使わないデッキが流行する」 →「リシャーダの港に対策しない人が増える」 →「対策カードが環境にないので、リシャーダの港入りデッキが再び流行する」(最初に戻る) Finals00の時点ではTOP8のうち、リシャーダの港を使用したデッキはノーファイアーただ一つであり、逆に約半数のデッキが対策カードサーボの網/Tsabo's Webを使用していた。 しかし日本選手権01でのTOP8のデッキのうち、サーボの網を使用したデッキはネザーゴーとタッチ緑のスクエア・ヴォイドだけであり、残り全てのデッキ(Long Firesやマシーンヘッドなど)がリシャーダの港を投入していた。
- パララクス補充からアングリーハーミットを巡るメタの変遷はさながら「大河ドラマ」を見る様である。
「パララクス補充が流行。余りにも強いため、それ以外のデッキが駆逐されだす」 →「パララクス補充に強いトリニティが開発され、環境を支配しはじめる」(注1) →「アンチ・トリニティデッキとしてアングリーハーミットが台頭する」 →「増えたアングリーハーミットに有利な、アングリーノンハーミットが台頭」(注2) →「アングリーノンハーミットを食えるパララクス補充が復権」(最初に戻る) (注1)パララクス補充は、キーカードの殆どが4マナ。トリニティはそれが揃う前にマナ加速からすき込み/Plow Underを打てるため優位に立てた。すき込みを序盤に打てる点は、パララクス補充に対してのみならず、当時の環境に大きく有効だった。 (注2)アングリーノンハーミットは、ミラーマッチでアングリーハーミットに対して有利なデッキとして出てきた。錯乱した隠遁者/Deranged Hermitを抜いているのが特徴。しかしスピードは単なるステロイド系デッキと変わらない。
- 実はこの後に更に後日談がある。
結局パララクス補充同士のミラーマッチが増えた結果、サイドから投入される時間の名人/Temporal Adeptが勝負を分けた。先出しできれば、デッキの構造上3マナ以下でクリーチャーを除去できないために、延々と毎ターン土地を戻し続けて4マナ揃えられなくするというこのミラーマッチでしか成立しない「完全ロック」が存在したからである。
大きな大会で勝つには、単体での強さに加え、メタゲームの視点からデッキを選択することが必須となる。 そうすることで、プレイヤーはより高尚な勝利、より深い楽しみを得ることができる。
- たとえば、ネクロ全盛の1996年(通称ネクロの夏)、白ウィニー「12Knights」で世界選手権に優勝したTom Chanphengは、メタゲームの力を圧倒的に見せつけた。
- 環境が一色であっても、ミラーマッチという形でメタゲームは存在する。
「MoMaの冬」たるThe Finals98を制した小宮忠義のMoMaは、赤マナを散らして紅蓮破/Pyroblastや火の玉/Fireballを入れるのみならず、サイドボードに解呪/Disenchantやヨーグモスの意志/Yawgmoth's Willまで投入した「対MoMa用MoMa」であった。 つまりMoMa一色の大会ですら、オーソドックスな青単色MoMaでは優勝は覚束ないと彼は判断した。普通のウィニーには屁のつっぱりにもならない紅蓮破がメインに入っているデッキが優勝したのは、メタゲームをうまく利用した結果と言えよう。