山分けカード
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こちらに選択権のあるカードの強みは、その状況に応じて最も有効な効果を選べる点にある。他方、相手に選択権のあるカードはこの逆で、その状況に応じて最も有利でない効果が選ばれてしまう。これが、相手に選択権のあるカードが弱いとされる端的な理由である。 | こちらに選択権のあるカードの強みは、その状況に応じて最も有効な効果を選べる点にある。他方、相手に選択権のあるカードはこの逆で、その状況に応じて最も有利でない効果が選ばれてしまう。これが、相手に選択権のあるカードが弱いとされる端的な理由である。 | ||
− | + | より具体的に説明すると、一般的に、相手に選択権のあるカードは、額面上の効果はその一つ一つが相当破格であるものがほとんどである。そのため、よく初心者は、「どちらの選択をされても強い」と勘違いしがちである。しかし、実際にデッキに入れて運用してみればわかるが、カードの効果が実際に使う場面でどれほどの成果をあげられるかは、導入するデッキ、相手のデッキ、ゲームの状況によって大きく左右されることが多く、どちらの選択肢も十全の成果を発揮できる場面というのは、意外なほど少ない。 | |
例を挙げると、行動か死かは、一見するとどちらの選択をしても大量のクリーチャーを除去できる可能性があるし、そうでなくても1体除去できれば残酷な布告相当であり、強そうに見える。しかし、実際のゲームでは相手のクリーチャーが1体以下で、行動か死かが何の効果もあげられないシチュエーションは何ら珍しくない。もちろん、状況によっては大きな効果をあげられる場面もあるが、基本的にトーナメントという長期戦を勝ち抜くには、如何に”安定した強さ”を得るかが重要であり、こういった不安定さはトーナメントを勝ち抜く上では不安要素でしかなく、それならば確実に1体を除去できるカードを投入したほうがいい、という結論に落ち着きやすい。この理屈は、[[懲罰者カード]]、[[恐喝カード]]、[[貢納]]、広義に見れば[[リスティック]]などにも当てはまる。 | 例を挙げると、行動か死かは、一見するとどちらの選択をしても大量のクリーチャーを除去できる可能性があるし、そうでなくても1体除去できれば残酷な布告相当であり、強そうに見える。しかし、実際のゲームでは相手のクリーチャーが1体以下で、行動か死かが何の効果もあげられないシチュエーションは何ら珍しくない。もちろん、状況によっては大きな効果をあげられる場面もあるが、基本的にトーナメントという長期戦を勝ち抜くには、如何に”安定した強さ”を得るかが重要であり、こういった不安定さはトーナメントを勝ち抜く上では不安要素でしかなく、それならば確実に1体を除去できるカードを投入したほうがいい、という結論に落ち着きやすい。この理屈は、[[懲罰者カード]]、[[恐喝カード]]、[[貢納]]、広義に見れば[[リスティック]]などにも当てはまる。 |
2018年8月1日 (水) 21:25時点における版
山分けカード/Divvy Cardは、インベイジョンに登場した、いくつかのカードを2つの束に分け、そのうち一方だけに効果を与える、もしくはそれぞれに別々の効果を与えるカードの総称。時のらせんで直接的なリメイクが1枚登場したほか、同様の挙動をするカードがいくつか存在する。
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。あなたは、そのプレイヤーがコントロールするすべてのクリーチャーを、2つの束に分ける。そのプレイヤーが選んだ1つの束のクリーチャーをすべて破壊する。それらは再生できない。
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解説
山分けカードのほとんどは「分けるのは自分で、選ぶのは対戦相手」となっているため、対戦相手側が自分にとって有利になるように選ぶことが容易であり、ルール文章を読んだ印象ほど強力ではないものが多い。栄光か死か/Death or Gloryやたわむか折れるか/Bend or Breakなどの、効果そのものが強力でどちらを選ばれても相応に強いものを除いて、あまり使われないまま終わってしまった。(#相手に選択権のあるカードは弱い理由も参照)
- 嘘か真か/Fact or Fictionは「分けるのは対戦相手で、選ぶのは自分」と逆になっているため、効果そのものの強さも相まって、トップクラスのカードとして活躍した。
- 1つの束が0枚であってもよい(CR:700.3d)。
- 束にする際、カードはそれが現在ある領域にあるままである。「束」という領域や追放領域などに一度移動させたりするわけではない。
- 当時は"pile"を「山」と訳していたが、現在では基本土地タイプの「山」との混同を避けるため「束」と訳している。
- 登場当初は「表向きの」束に分けるとルール文章に明記されていたものがいくつかあったが、裏向きのオブジェクトとの関連でエラッタが出され、この記述は取り除かれている。
- 内容が分からない状態にして無作為に選ばせるものだ、と勘違いする人がいないように、念を押して記述していただけなので、エラッタ前後で挙動が変わったわけではない。
- インベイジョンのものはすべてカード名が「A or B」となっているなど、ある程度の統一感を持ってデザインされているが、カード・タイプはインスタント・ソーサリー・エンチャントとバラバラで、また緑には存在しないため、サイクルとしてはやや不完全である。
山分けカード一覧
インベイジョン
- 栄光か死か/Death or Glory
- 嘘か真か/Fact or Fiction
- 行動か死か/Do or Die
- たわむか折れるか/Bend or Break
- 立つか転ぶか/Stand or Fall
- 闘争か逃亡か/Fight or Flight
その他
- Camouflage(リミテッド・エディション)
- Raging River(リミテッド・エディション)
- Phyrexian Portal(アライアンス)
- 真実か詐話か/Truth or Tale(時のらせん)
- 輝く根本原理/Brilliant Ultimatum(アラーラの断片)
- ウスーンのスフィンクス/Sphinx of Uthuun(基本セット2012)
- ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil(イニストラード)
- 思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought(ラヴニカへの回帰)
- 蒸気占い/Steam Augury(テーロス)
- 運命の気まぐれ/Whims of the Fates(神々の軍勢)
- 溺墓での天啓/Epiphany at the Drownyard(イニストラードを覆う影)
- 偏った幸運/Fortune's Favor(異界月)
- 骨塚協議/Boneyard Parley(イクサラン)
相手に選択権のあるカードは弱い理由
こちらに選択権のあるカードの強みは、その状況に応じて最も有効な効果を選べる点にある。他方、相手に選択権のあるカードはこの逆で、その状況に応じて最も有利でない効果が選ばれてしまう。これが、相手に選択権のあるカードが弱いとされる端的な理由である。
より具体的に説明すると、一般的に、相手に選択権のあるカードは、額面上の効果はその一つ一つが相当破格であるものがほとんどである。そのため、よく初心者は、「どちらの選択をされても強い」と勘違いしがちである。しかし、実際にデッキに入れて運用してみればわかるが、カードの効果が実際に使う場面でどれほどの成果をあげられるかは、導入するデッキ、相手のデッキ、ゲームの状況によって大きく左右されることが多く、どちらの選択肢も十全の成果を発揮できる場面というのは、意外なほど少ない。
例を挙げると、行動か死かは、一見するとどちらの選択をしても大量のクリーチャーを除去できる可能性があるし、そうでなくても1体除去できれば残酷な布告相当であり、強そうに見える。しかし、実際のゲームでは相手のクリーチャーが1体以下で、行動か死かが何の効果もあげられないシチュエーションは何ら珍しくない。もちろん、状況によっては大きな効果をあげられる場面もあるが、基本的にトーナメントという長期戦を勝ち抜くには、如何に”安定した強さ”を得るかが重要であり、こういった不安定さはトーナメントを勝ち抜く上では不安要素でしかなく、それならば確実に1体を除去できるカードを投入したほうがいい、という結論に落ち着きやすい。この理屈は、懲罰者カード、恐喝カード、貢納、広義に見ればリスティックなどにも当てはまる。
ただし、条件によっては「対戦相手に選択権があったとしても十分強い」ということはありえる。典型的な例をいえば、単に額面上どちらの効果も強いというだけでなく、どちらの効果も導入したデッキの基本戦略と噛み合っており、いずれの効果を選択されても大局的に見れば同様の成果を挙げられる場合である。例えば溶岩のあぶく/Lava Blisterの場合、相手の展開は始まる前に勝利することを目的としたアグロ寄りのデッキならば、いずれの効果を選ばれても、対戦相手が展開を始める前に速やかに勝利を得ることに貢献することができる。このような「どちらが選ばれても困らない」デザインで成功した例には、後の怒鳴りつけ/Browbeatや苛立たしい小悪魔/Vexing Devilが該当する。
また他にも、他の最終的な選択権が対戦相手にある呪文でも、例えば各種布告系除去は、「クリーチャーそのものを対象に取らない」「生け贄なので再生や破壊不能などを無視できる」などの強みがあるし、また例えば直観/Intuitionやけちな贈り物/Gifts Ungivenは、提示するカードの組み合わせによって実質的に選択権がないようにしたり、どう選ばれても得するように操作したりできる。
なお、端的に言って、「A」か「B」の効果のうちどちらかを相手が選ぶ、というのは、「A」の効果だけ、「B」の効果だけのカードそれぞれの下位互換である。
例を挙げると、例えば3マナのソーサリーで、「対象の土地1つを破壊する」か「対象の対戦相手1人に10点のダメージを与える」のどちらかを対戦相手が選ぶ、というカードがあったとする。これは一見すると、同じマナ・コストで土地破壊しかできない石の雨/Stone Rainよりお得に見えるが、実際は石の雨の下位互換である。「3マナで10点ダメージの可能性がある」のではなく、「石の雨」が相手にとって都合が悪い時に、「10点ダメージ」という逃げ道を与えてしまう、が正解である。
例えこれが、「土地破壊」か「30点ダメージ」であったとしても、「土地破壊」か「あなたは勝利する」であったとしても、理屈は同様である。もう片方がどれだけ強力でどれだけ選びにくいものであったとしても、「逃げ道がある」というぶんだけ劣っている。簡単には納得できないかもしれないが、このとき対戦相手が赤の防御円/Circle of Protection: Redや白金の天使/Platinum Angelをコントロールしていたらどうなるか考えてみれば少し分かりやすいだろう。
まとめると、「選択権が対戦相手にあること」は基本的には大きな欠点である。採用されるかどうかは、それ以上の強みがあるか、その強みを生かす使い方ができるか、によると言えるだろう。
- 蛇足だが、「自分に効果の選択権がある」カードの場合、それぞれの効果の上位互換になる。上記の「石の雨」の例ならば、もうひとつの効果が「対戦相手は20点のライフを得る」のような明らかに使いそうにないものだったとしても、それは石の雨の上位互換である。