蒸気打ちの親分/Steamflogger Boss

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Steamflogger Boss / 蒸気打ちの親分 (3)(赤)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin) 装具工(Rigger)

あなたがコントロールしている他の装具工(Rigger)クリーチャーは、+1/+0の修整を受けるとともに速攻を持つ。
あなたがコントロールする装具工がからくり(Contraption)を組み立てる場合、それは代わりに2個のからくりを組み立てる。

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未来予知ミライシフトカードの1つ。マジックそのものの未来をメタ視点で描いた異色の存在。

目次

[編集] 通常のマジックにおける評価

装具工」というクリーチャー・タイプロード的存在なのだろうが、未来予知時点では装具工自体がこれ1体(と霧衣の究極体/Mistform Ultimus)しか存在しておらず、その後もローウィンでのクリーチャー・タイプ大改編多相の登場で少量増えただけ。ロードとしてはかなり貧弱な部類。

さらに新種のアーティファクト・タイプである「からくり」への言及があるものの、からくりを持つアーティファクト黒枠には存在していない(後述するが、アン・ゲームにのみ存在する)。「組み立てる」というルール用語も登場しているが、総合ルールで意味が定義されていない(アン・ゲームでしか機能しない)ため、全くの無意味な文章でしかない。つまりロード能力以外何も持っていないのと同じ。時のらせんブロックには他にも前代未聞なカードが溢れているが、その中でもこれは一際異彩を放つカードである。

よって、通常のマジックにおける性能としては「極めてマイナーなロード」でしかなく、装具工の希少性を鑑みれば「単なる重いゴブリン」と評してしまっても過言ではない。構築での出番はないだろう。リミテッドでは一応「2枚以上並べばちょっと強くなれる丘巨人/Hill Giant」という程度の性能はあるので数合わせとして使えないこともないが、レアなので2枚以上揃うことは滅多になく、コモンレベル止まりのハズレレアと言わざるを得ない。

[編集] デザインの意図と反響

実際のところ、デザイン時点では今後のマジック:ザ・ギャザリングで「装具工」というクリーチャー・タイプも「からくり」というアーティファクト・タイプも、「組み立てる」というルール用語も使用する予定は無かった。ミライシフト・カードが描く「マジックの未来」の中でも「決して訪れることのない未来」としてデザインされた一種のジョーク・カードである[1][2]

Aaron Forsytheがその事実をコラムで発表した後、賛否含め多くの意見が寄せられた。「蒸気打ちの親分は印刷される価値のある面白さか?」というウェブ上のアンケートでは、「面白い」に対して「面白くてもカード1枚を無駄にするほどではない」「面白くない」がやや上回る結果となった。意見の中で特に目立ったのは「最初からジョーク・カードとしてデザインされたとネタばらしされるまでは許容できた」と「コンセプトは許容できるがレアで行われたことが腹立たしい」という意見であった[3]

開発部内でもこのカードについてはデザイン中に何度も議論が紛糾した。

  • Mark Rosewaterは反対派であり、プレイヤーはからくりの登場を期待し、実際に行われるまで不満に思い続けると主張した[1]。自身のコラムでも、このカードを嫌っていると明言し何度もセットから抹消しようと試みたと語っている[4]。Markはからくりを待ち望むプレイヤーのために、引退前までにはからくり問題を解決することを誓っていた[5][2]
  • Devin Lowは開発部の中でもこのカードを特に気に入っており、「強い感情を引き起こせるカードである」と収録を推し進めた[4]
  • Matt Placeは後に興味を惹かせるデザインの代表的な失敗例の1つとしてこのカードを挙げ、「初見の笑いのためにゲームプレイを犠牲にするカードを作るべきでは無い」と述べている。[6]

[編集] からくりの登場

初出から10年の時を経た2017年アン・セットUnstableにて遂にからくりが登場。このカードも特例的に黒枠で再録され、稀少度はレアだが、ブースターパックからは基本土地の枠で出現する(変則的な稀少度)。イラストは未来予知版と同じだが、文章欄にはゴブリンの爆発屋/Goblin Explosioneers透かしが入っており、新たなフレイバー・テキストも与えられた(カード画像)。同時に装具工も多数追加され、晴れて全ての能力が完全に機能するようになった(もちろんアン・ゲーム限定ではあるが)。

Unstable内での性能は、装具工が全に存在することからリミテッドでもロードとしての働きは保証できる。装具工のからくりの組み立てを2倍にする能力も極めて強力であり、親分の名に恥じない力を発揮してくれる。

[編集] 開発秘話

最初のデザインはジョークとして、それまで存在しないクリーチャー・タイプを扱うカードであった[1]


非公式/非実在カード

Splorg Lord (2)(赤)(赤)
クリーチャー — ゴブリン・Splorg

(赤),ゴブリンを1体生け贄に捧げる:ターン終了時まで、すべてのSplorgは二段攻撃を得る。
(赤),Splorgを1体生け贄に捧げる:ターン終了時まで、すべてのゴブリンは+2/+0の修整を受ける。

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しかし、他に存在しない(単一のカードのみで扱われる)クリーチャー・タイプを扱うカードは過去にも蜂の巣/The Hiveサンダーメア/Thundermare(いずれも旧オラクル)など多数存在しており珍しさに欠け、何より霧衣の究極体/Mistform Ultimusが存在していたため、どうしても参照先が存在してしまうという問題点があった。なお、この「従来存在しないクリーチャー・タイプを扱う」というデザイン・コンセプトは同じ未来予知タイムシフトのボールドウィアの威嚇者/Boldwyr Intimidatorに採用されている。

次の案として現在のデザイン方向に変更され、慎重に現在では理解できない文章が検討された。


非公式/非実在カード

Splorg Lord (2)(赤)(赤)
クリーチャー — ゴブリン・Splorg

すべてのSplorgは+1/+1の修整を受けるとともに渡りを持つ。
If a Splorg you control would harvest a resource, you may have it erect a monument instead.(あなたがコントロールするSplorgが資源を収穫する場合、代わりにあなたは「それは碑を建立する」ことを選んでよい。)

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その他の案は以下の通り:

  • If a Splorg you control would erect a monument, it erects two monuments instead.(あなたがコントロールするSplorgが碑を建立する場合、それは代わりに2つの碑を建立する。)
    • 「装具工」と「Splorg」、「からくり」と「碑」を入れ替えれば、実際の能力とほぼ同じ。
  • Other Splorgs you control may attack and block as if the "five-second rule" didn't apply to them.(あなたがコントロールする他のSplorgは「5秒ルール」が適用されないかのように攻撃ブロックしてもよい。)
  • Whenever you activate a possess ability of a Splorg, you may ignore all Superstitions this turn.(あなたがSplorgの妄執能力を起動するたび、あなたはこのターン、すべての迷信を無視することを選んでもよい。)
  • Splorg cards you own in Limbo can't reemerge with other cards.(リンボのあなたがオーナーであるSplorgカードは他のカードと再興できない。)
  • Whenever another Splorg you control becomes self-aware, you may toggle any or all of its statuses. (The statuses are tapped/untapped, face up/face down, and unflipped/flipped.).(あなたがコントロールする他のSplorgが自己認識するたび、あなたはそれらのいずれか、あるいはすべての位相を切り替えてよい。(位相とはタップ状態とアンタップ状態、表向き裏向き、そして反転状態と非反転状態である))
  • Other Splorgs you control have "T, Devolve one level: Target player sacrifices a non-evolved permanent for each spell in his or her group memory.".(あなたがコントロールする他のSplorgは「(T),レベルを1つ下げる:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自身の記憶群の呪文1つにつき、進化していないパーマネントを1つ生け贄に捧げる。」を得る。)
  • When CARDNAME is put into a graveyard from play, each Slorg card in Limbo is assigned a new variable evolution path.(このカードがから墓地に置かれるたび、リンボの各Splorg・カードは新しい可変進化経路を割り振られる。)
  • If another Splorg you control would molt, it molts tomorrow instead.(あなたがコントロールする他のSplorgが脱皮する場合、それは代わりに明日脱皮する。)
  • Splorgs you control have ideal traits. Splorg missions can't be aborted.(あなたがコントロールするSplorgは理想的な特徴を持つ。Splorgの作戦は中止されない。)

[編集] その他

  • 新しいカード・セット(特にアーティファクトがテーマとなりそうなセット)が出る度に、「次こそからくりの時代が来るに違いない」と(冗談半分で)よく名前が挙がっていた。
  • The Great Designer Search 2の決勝戦では、このカードが不採用になったという設定の課題が与えられた。

[編集] ストーリー

[編集] 未来予知

蒸気打ちの親分/Steamflogger Bossは、蒸気打ち/Steamfloggerを操縦するゴブリン/Goblin

蒸気打ち/Steamfloggerとは、操縦者と同伴する装具工達をやる気にさせるために造られた、蒸気で動くアーティファクトのオンボロ乗り物のこと。鞭と爪状の2種類のやる気向上腕を備えており、これらの腕を使ってやる気を引き出している。

バツをブンと振れ! マルつまめ! 何作ってんだか、俺知らね!

イラストと未来予知版フレイバー・テキストから、装具工には「バツ/X」と「マル/O」の2階級が存在しており、頭上にその階級が刻まれていることが分かる。親分は、バツ階級に対しては蒸気打ちの右腕で鞭で打つ(Whip the Xs!)、マル階級なら左腕の爪でつねる(Pinch the Os!)と、巧みに腕を使い分けてやる気を引き出している。こうして親分の周りの装具工は重い物を持ち運んでいるものの、実は彼らの誰も自分が何を作っているのかまったく分かっていない。

親分に注意すると、親分自身の頭とやる気向上機械の両方にもバツが刻まれている。彼がかつてのバツ階級から成り上がった人物なのか、あるいは親分の役目が輪番制なのか、どのような理由があるのか定かではない[7]

  • 何作ってんだか、俺知らね!」というセリフはそのまま「からくり」が何なのか分からないというカードデザインと重なって取れる。

[編集] Unstable

蒸気打ちの親分/Steamflogger Bossは、ゴブリンの爆発屋/Goblin Explosioneersに所属するゴブリン。

爆発屋の内情についてはあまり知られていないが、数年前、一人の蒸気打ちの親分が街に現れて狂ったように放浪したことで、さまざまな憶測を生むきっかけとなった[8]

「今やめるんじゃない、ほとんど終わってるんだ。これの次にもう1個組み立てるぜ!」
  • 上記のストーリーは未来予知における扱いのメタファーと思われる。
  • バブロヴィア/Babloviaにおける蒸気打ち/Steamfloggerは機械のことではなく、爆発屋の前身組織である蒸気打ち工業/Steamflogger Industriesを指すと思われる。事実、Unstable初出の「蒸気打ち」の名を持つカードはこのカードのような機械に乗っていない。

[編集] 脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 Are You From the Future(Internet Archive)(Latest Developments 2007年5月4日)
  2. 2.0 2.1 終わりなき銀枠物語 その1(Making Magic 2017年11月6日)
  3. Three Things I Get Mail About(Internet Archive)(Latest Developments 2007年5月11日)
  4. 4.0 4.1 Timeshift After Timeshift(Making Magic 2007年4月30日)
  5. おしえてあなたの望むこと(Making Magic 2016年3月7日)
  6. Look Out, R&D! It's a Trap!(Internet Archive)(Latest Developments 2009年11月27日)
  7. Rigger Xs and Rigger Os(Internet Archive)(Arcana 2007年5月3日)
  8. World Class/ワールド・クラス(Magic Story 2017年11月29日 Mark Rosewater著)

[編集] 参考

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