山分けカード
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山分けカード/Divvy Cardは、インベイジョンに登場した、いくつかのカードを2つの束に分け、そのうち一方だけに効果を与える、もしくはそれぞれに別々の効果を与えるカードの総称。時のらせんで直接的なリメイクが1枚登場したほか、同様の挙動をするカードがいくつか存在する。
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。あなたは、そのプレイヤーがコントロールするすべてのクリーチャーを、2つの束に分ける。そのプレイヤーが選んだ1つの束のクリーチャーをすべて破壊する。それらは再生できない。
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解説
山分けカードのほとんどは「分けるのは自分で、選ぶのは対戦相手」となっているため、対戦相手側が自分にとって有利になるように選ぶことが容易であり、ルール文章を読んだ印象ほど強力ではないものが多い。栄光か死か/Death or Gloryやたわむか折れるか/Bend or Breakなどの、効果そのものが強力でどちらを選ばれても相応に強いものを除いて、あまり使われないまま終わってしまった。(#相手に選択権のあるカードは弱い理由も参照)
- 嘘か真か/Fact or Fictionだけは「分けるのは対戦相手で、選ぶのは自分」と逆になっているため、効果そのものの強さも相まって、トップクラスのカードとして活躍した。
- 1つの束が0枚であってもよい(CR:700.3d)。
- 束にする際、カードはそれが現在ある領域にあるままである。「束」という領域や追放領域などに一度移動させたりするわけではない。
- 当時は"pile"を「山」と訳していたが、現在では基本土地タイプの「山」との混同を避けるため「束」と訳している。
- 登場当初は「表向きの」束に分けるとルール文章に明記されていたものがいくつかあったが、裏向きのオブジェクトとの関連でエラッタが出され、この記述は取り除かれている。
- 内容が分からない状態にして無作為に選ばせるものだ、と勘違いする人がいないように、念を押して記述していただけなので、エラッタ前後で挙動が変わったわけではない。
- インベイジョンのものはすべてカード名が「A or B」となっているなど、ある程度の統一感を持ってデザインされているが、カード・タイプはインスタント/ソーサリー/エンチャントとバラバラで、また緑には存在しないため、サイクルとしてはやや不完全である。
山分けカード一覧
インベイジョン
- 栄光か死か/Death or Glory
- 嘘か真か/Fact or Fiction
- 行動か死か/Do or Die
- たわむか折れるか/Bend or Break
- 立つか転ぶか/Stand or Fall
- 闘争か逃亡か/Fight or Flight
その他
- Camouflage(リミテッド・エディション)
- Raging River(リミテッド・エディション)
- Phyrexian Portal(アライアンス)
- 真実か詐話か/Truth or Tale(時のらせん)
- 輝く根本原理/Brilliant Ultimatum(アラーラの断片)
- ウスーンのスフィンクス/Sphinx of Uthuun(基本セット2012)
- ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil(イニストラード)
- 思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought(ラヴニカへの回帰)
- 蒸気占い/Steam Augury(テーロス)
- 運命の気まぐれ/Whims of the Fates(神々の軍勢)
- 溺墓での天啓/Epiphany at the Drownyard(イニストラードを覆う影)
- 偏った幸運/Fortune's Favor(異界月)
- 羊頭スフィンクスの君主、アネシ/Unesh, Criosphinx Sovereign(破滅の刻)
- 骨塚協議/Boneyard Parley(イクサラン)
- 悪への引き渡し/Deliver Unto Evil(灯争大戦)
- 半真実の神託者、アトリス/Atris, Oracle of Half-Truths(テーロス還魂記)
相手に選択権のあるカードは弱い理由
各カードのカードパワーを論じる際、「最大値」よりも「期待値」、言い換えれば「安定感」「常に一定の効果を発揮できるか」に重点が置かれるのが通例である。
しかし、相手に選択権のあるカードはそもそもその性質上、選択肢の中で「その状況に応じて最も有利でない効果」が必ず選ばれてしまう。つまり、安定感の面で欠陥があるケースが多いのである。これが、相手に選択権のあるカードが弱いとされる端的な理由である。
この理屈は、懲罰者カード、恐喝カード、貢納、広義に見ればリスティックなどにも当てはまる。あるいは、コイン投げやサイコロなどランダム要素に左右されるカードも(運任せで選択権が自分にない、という意味で)延長上にあると考えてもいいだろう。
原則
端的に言って、「A」か「B」の効果のうちどちらかを相手が選ぶ、というのは、「A」の効果だけ、「B」の効果だけのカードそれぞれの下位互換である。
例を挙げると、例えば3マナのソーサリーで、「対象の土地1つを破壊する」か「対象の対戦相手1人に10点のダメージを与える」のどちらかを対戦相手が選ぶ、というカードがあったとする。これは一見すると、同じマナ・コストで土地破壊しかできない石の雨/Stone Rainよりお得に見えるが、実際は石の雨の下位互換である。「3マナで10点ダメージの可能性がある」のではなく、「石の雨」が相手にとって都合が悪い時に、「10点ダメージ」という逃げ道を与えてしまう、が正解である。
例えこれが、「土地破壊」か「30点ダメージ」であったとしても、「土地破壊」か「あなたは勝利する」であったとしても、理屈は同様である。もう片方がどれだけ強力でどれだけ選びにくいものであったとしても、「逃げ道がある」というぶんだけ劣っている。簡単には納得できないかもしれないが、このとき対戦相手が赤の防御円/Circle of Protection: Redや白金の天使/Platinum Angelをコントロールしていたらどうなるか考えてみれば少し分かりやすいだろう。
- 蛇足だが、「自分に効果の選択権がある」カードの場合、それぞれの効果の上位互換になる。上記の「石の雨」の例ならば、もうひとつの効果が「対戦相手は20点のライフを得る」のような明らかに使いそうにないものだったとしても、それは石の雨の上位互換である。
応用
上記の例ほど極端ではないにしろ、一般的に、相手に選択権のあるカードは同じ欠陥を抱えている。
額面上の効果はコスト・パフォーマンスに優れた設定になっていることもあり、一見「どちらを選ばれても強い」と勘違いしがちである。しかし、実際に運用してみると、カードの効果が実際に使う場面でどれほどの成果をあげられるかは、導入するデッキ、相手のデッキ、ゲームの状況によって大きく左右されるため、「どちらでも強い」という状況は意外なほど少ない。多くの場合で「どちらかはあまり有効ではない」という状況になってしまい、「有効ではないほうを選ばれて逃げられる」という結果に終わってしまうのである。
それでも、いくつかのカードがトーナメント・レベルで使用されている。具体的には以下のような理由が挙げられる。
- どちらの選択肢が選ばれてもよい状況が作りやすい。
- 単純に効果の大きさや汎用性が高水準にあり、いつ使っても強力である。(例:怒鳴りつけ/Browbeat)
- どちらも近い方向性の効果であり、同じ戦略上で運用できる。(例:苛立たしい小悪魔/Vexing Devil)
- 事実上「選択権がこちらにある」ような運用ができる。(例:直観/Intuition、けちな贈り物/Gifts Ungiven)
- 欠点はあるが、独自の強みもある。(例:布告系除去、溶岩のあぶく/Lava Blister)