ファイレクシア/Phyrexia
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ファイレクシア/Phyrexiaとは、多元宇宙/Multiverseに存在する次元/Plane、文明の1つ。
ここでは、ヨーグモス/Yawgmothが支配したオリジナルのファイレクシアを解説する。金属次元ミラディン/Mirrodinにて再興した新ファイレクシアについては新ファイレクシア/New Phyrexiaを参照。
新ファイレクシアと明確に区別するためや誤解を避ける目的などの理由から、文章や会話の流れによってはプレイヤー達から『旧ファイレクシア』と呼ばれる場合も稀にある。
- 訳語が固まっていない時期には、RPGマガジンなどでフィレクシアと訳されることもあった。
ファイレクシア/Phyrexiaの名前がカード名に初登場したのはアンティキティーのPhyrexian GremlinsとGate to Phyrexiaの2枚。フレイバー・テキストでの初登場もまた同じくGate to Phyrexiaである。
- また、Gate to Phyrexiaのフレイバーには、早くもファイレクシアの油/Phyrexian oilのことを連想させる記述がある。
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概要
暗黒次元、諸悪の根源、この世の全ての悪。全てが人工的に作られた球状の世界。
遥か遠い遠い昔、竜の姿を好んだ人間/Humanの邪悪なプレインズウォーカー/Planeswalkerによって、ファイレクシア次元は創造された。ただし、その創造主自らが『ファイレクシア』と名付けたワケではない。この世界を『ファイレクシア』と名付けたのはヨーグモスである。 創造された年代は、推定で紀元前AR5,000年~紀元前4,000年の間、もしくはそれよりもずっと昔である。
環境
ファイレクシア表層部の空には、太陽や月、星といった時の流れを感じさせる手立てが何ひとつ存在しない。ただ黄昏時の灰色をした空が広がっている。大気は油と火薬の匂い、硝煙と金属粉に満ちている。短時間ならば生身の人間が活動することも不可能ではない。しかし、次元の中心に向かうほどにそれらの風景は醜悪さをさらに増していく。休みなくススを吐き出し続ける煙突(イラスト)や悪臭を放つ塔(イラスト)が立ち並び、光を放つほどに溶けた金属や高温の油がまるで河や滝のように流れ、湖や海のような溜まりを形作っている。
生態
ほとんどのファイレクシア人たちおよび、ファイレクシアの生物兵器は、血の代わりに油と粘液が流れる、肉と機械の融合生命体である。ファイレクシア人たちが機械の肉体をしている理由は、何も戦闘用のためだけではない。肉体の交換、修復、修繕、再生、そして補強や改造が容易に可能な、頑丈で強靭な機械製の肉体や内臓でないと、致死性を増していくファイレクシア内部の過酷な環境での生存が不可能だからなのだ。
金属と死と悪意が渦巻く地獄のような世界。交換、補強、改造が容易な機械製の肉体と内臓。こうした境遇を生きるファイレクシア人の外見は、他の世界のヒューマノイド系住人(※人間のように知的で社会性のある文化的な暮らしをしている、人間ではない種族。例えばエルフ/Elfやレオニン/Leoninなど)たちと比べると不自然に加速した進化、歪んだ進化を遂げている。まっとうな人型をしているファイレクシア人ですら表皮がなく、骨や筋肉がむき出しになっている者もいれば、アーティファクト・クリーチャーと区別がつかないような外見をしている者もいる。 口や手などの体の一部分が極端に肥大化した者や、複数の四肢を持つ者がいる一方で、逆に最低限の粗末な体しか持たぬ者もいる。異形の姿をした者ばかりかと思えば潜伏工作員のように中身は機械だが、外見のみ完全に生身の人間と同じ見た目をしているファイレクシア人もいる。このように、ファイレクシア人たちの外見的特徴の統一性は、ほとんど無いと言っていい。『血の代わりにファイレクシアの油/Phyrexian oilが流れていること』が、ファイレクシア人達の数少ない身体的特徴の共通点の一つである。また、多くのファイレクシア人たちにとって基本的に寿命という概念は存在しない。よほどのダメージでも負わぬ限り半永久的に死ぬことのない、不老の融合生命体だからである。
- ファイレクシア人の致命的欠陥に、彼らは(魂を持たない故か)プレインズウォーカーの灯/Planeswalker's Sparkを持つことが出来ないということがある。つまり、彼らは自力で次元を超えて旅することが出来ない[1]。
暗黒次元の興り
ファイレクシアを創造したプレインズウォーカーの死後、主を失って長い間放置されていたところを、プレインズウォーカーのダヴェッド/Dyfedによって発見される。 ダヴェッドは、スラン帝国で研究をしていたヨーグモス(この当時はまだ人間だった)にこの世界の存在を教え、スラン帝国の首都ハルシオン/Halcyonの地下に、ドミナリア/Dominariaとこの世界とを繋ぐポータル/Portalを作り与えた。(イラスト)
ヨーグモスは、当時スラン帝国で蔓延していた病"ファイシス症(結核/Phthisis)"に感染した患者たちを、ポータルを通して大勢この次元に連れてきた。そして"治療"という名の改造手術によってファイレクシア人を作り上げた。ファイシス症にかかった患者はみな、遅かれ早かれ死ぬか、その前に"治療"を受ける定めかのどちらかである。そのため"ファイシス症"というこの言葉は、広義で『"治療"を要する者、受けねばならぬ者』となり、転じて『ファイレクシア化する(ファイレクシア人、ファイレクシアの民になる)』という意味も含むようになる。(※『ファイレクシア/Phyrexia』とはいう呼称は、この"ファイシス病/Phthisis"が語源になっているという説もある。)"治療"を施されたスランの者たちは皆、ヨーグモスを崇め讃えるファイレクシアの臣民へと生まれ変わった。機械の始祖、ヨーグモスが支配する次元の誕生である。
ヨーグモスはファイレクシア人たちに一つの目的を与えた。「繁栄せよ。ファイレクシアという枠を飛び越えて多元宇宙/Multiverseへと広がれ」と。
ドミナリア、及びウルザとの抗争
スランの四都市がスラン同盟を名乗ってヨーグモスに反旗を翻すとヨーグモスも軍勢を動かし、ここにスラン内乱/Thran Civil Warが始まる。
スラン内乱はファイレクシアの勝利に見えたが、土壇場でレベック/Rebbecがヨーグモスを裏切り、グレイシャン/Glacianの魂が封じられたパワーストーン/Powerstoneによってファイレクシアとドミナリアを繋ぐ唯一のポータルを封印した。このため、プレインズウォーカーではないヨーグモスは、その軍勢もろともファイレクシアに封印されてしまう。
スラン帝国の時代から過ぎ去ること約4,000年。悠久の年月が運んだ砂漠の砂の地下に埋もれた帝国首都ハルシオンの遺跡は、コイロスの洞窟/Caves of Koilosとなっていた。AR20年、洞窟を訪れたウルザ/Urzaとミシュラ/Mishraはパワーストーンを発見し、それを持ち出してしまうが、これこそファイレクシアに繋がるポータルを封印していたパワーストーンだった。これによりファイレクシアの封印は解けてしまい、兄弟戦争/Brothers' War中にはこのポータルを抜けてギックス/Gixがドミナリアにやってきてしまった。
ファイレクシアの法務官であるギックスは、ミシュラに機械の肉体といくつかのファイレクシア技術を与えた。ウルザとミシュラの兄弟戦争は、2人の兄弟間での戦いでもあるが、彼らが属する国家間同士の戦いでもある。そして、4,000年の時を経て再び行われた2度目のドミナリア=ファイレクシアの代理戦争であり、4,200年後に起こる『ファイレクシアによるドミナリア侵略戦争の前哨戦であった』とも言えよう。
人工次元であるファイレクシアは、人工次元であるがゆえに「いずれは次元の崩壊を起こす」という欠陥を抱えた次元である。次元崩壊によるファイレクシア文明の滅亡の宿命から逃れるため、あらゆる準備を始める。侵略戦争の拠点となる次元の用意、次元転移計画、多種多様な侵略用兵器・戦闘用兵器の開発や大量生産、疫病やウィルスなどの研究。そして、それらを行うための更なる技術向上。他の次元/Planeにおける様々な任務遂行のために、生身の人間を装ったファイレクシア人たち、潜伏工作員を創造したのも、そうした準備の一つである。
ミシュラを介してウルザ・ドミナリアと戦った兄弟戦争の終結から約1,500年後。裏切り者の潜伏工作員、ファイレクシア人ザンチャの導きにより、ウルザが報復のためにファイレクシア次元に攻め込んで来た。しかし致死的な汚染の広がるあまりに過酷なファイレクシアの環境と、ファイレクシア軍の執拗な攻撃のためにウルザは第四球層でギブアップ。手痛い傷を負った彼らはファイレクシアから逃げ出す。(これらの経験を教訓にしたウルザは、後のドミナリア=ファイレクシア戦争の際、ファイレクシアの汚染からの防護と破壊を目的とした戦闘兵器タイタン・スーツを製造する。)
そのウルザを追ってファイレクシア人たちはセラ/Serraの世界を襲う。ウルザがトレイリア学院を建設し対ファイレクシア戦の準備を進めると潜伏工作員ケリック/Kerrickを送り込み、ベナリアで血統実験を開始すると抹殺者を送り込んで皆殺しにする。2,500年間はこうした『ウルザの計画潰し』の繰り返しであったが、その一方でウルザもファイレクシアも着実に来たるべき決戦の準備を進めていた。
ラース/Rath、メルカディア/Mercadiaなどにドミナリア侵略の前線基地を建設。荒廃の王の副官としてラースにはエヴィンカーを配し、膨大な戦力を蓄えていた。
ファイレクシアによるドミナリア侵攻
AR4205年、ファイレクシアは念願のドミナリア侵攻を開始する。総司令官はサーボ・タヴォーク/Tsabo Tavoc。ドミナリアの世界各地で同時多発的に複数の次元の門/Planar Portalを開き、そこからファイレクシア、ラース、メルカディアで準備・製造していた巨大な空中戦艦や飛翔艦、そしてそれらに搭乗・搭載したファイレクシア軍やあらゆる兵器を継続的、かつ、大量に送り込み続ける電撃戦。その圧倒的な物量の波でドミナリア連合軍を押しつぶさんとする一方、各種の疫病をドミナリア全土にばら撒き、ドミナリアの生産力や連合軍の戦線維持力を消耗・衰えさせた。まさに完璧な作戦であった。
ドミナリア連合軍はウェザーライト/Weatherlight号が善戦するも、ベナリア/Benaliaやラノワール/Llanowar、ケルド/Keldも滅び、第二フェイズ、ラースの被覆/Rathi Overlayも発動。ラースに置かれた要塞/Strongholdはアーボーグに転移し、ラースをドミナリアに重ね合わせドミナリアをファイレクシア化させるという計画であった。ドミナリアを追い詰めることには成功したが、次元転移作戦の前にコイロスでの戦闘でサーボ・タヴォーク瀕死。帰還するもクロウヴァクス/Crovaxに殺され、総指揮権はクロウヴァクスのものになる。
一方そのころ、タイタン・スーツをまといファイレクシアに潜入した9人のプレインズウォーカーたち(ナイン・タイタンズ/Nine Titans)は仲間を失いながらもファイレクシア各地に爆弾をしかけることに成功する。ウルザ/Urzaとジェラード/Gerrardはヨーグモスの手に落ち、やむを得ず生き残った4人のプレインズウォーカーは爆弾に点火。ファイレクシア次元を破壊することに成功する。
その後、巨大な暗黒雲となってドミナリアに出現したヨーグモスもレガシー/Legacyによって消滅。こうして多元宇宙を脅かした邪悪な機械文明は滅び去った。
滅亡、再誕、新生
ファイレクシアの行った『ドミナリア侵略作戦』は、その全てが打ち砕かれた。ファイレクシアは次元ごと破壊され、荒廃の王ヨーグモスは完全に消滅した。 多元宇宙がファイレクシアの恐怖と苦痛に脅かされることは2度と無い。ハズだった・・・・
原因は"ファイレクシアの油/Phyrexian oil"である。"ファイレクシアの油"とは、普段は肉と機械の融合生命体であるファイレクシア人やファイレクシア製生体兵器の体内を流れる体液の一種でしかない。だが、非ファイレクシア人や非ファイレクシア製の兵器などがこの"油・体液"に触れると、途端に感染・浸食力の強いウィルス性の恐るべき侵略兵器となる。見た目はただの"黒い油"なのだが、この中にはファイレクシアに関する情報やデータが多分に含まれており、触れたものにその情報やデータを強制的に流し込む"汚染"を行う性質を持っている。"汚染"されたものはファイレクシア人へ変化させられてしまうのだ。
ファイレクシアの滅亡から数百年後のミラディン/Mirrodin。カーン/Karnの中で脈打つファイレクシア人ザンチャの心臓(ハートストーン)から染み出した油のしずくによって、ミラディンは"汚染"され、ファイレクシアは再誕した。それが新ファイレクシア/New Phyrexiaである。
また、新世代のプレインズウォーカーのエルズペス・ティレルが生まれ育った彼女の出身次元「カペナ/Capenna」はファイレクシアによって支配されていた。時系列的に、新ファイレクシアがミラディンに新生するより以前の話であるため、彼女の故郷の次元で起きたそれは旧ファイレクシア軍による大戦そして支配が行われており、結果としてファイレクシアを除ける事は出来たものの、その勝利の代償は次元の将来を大きく歪めてしまった。
ファイレクシア次元そのものは滅亡したが、ファイレクシアの非道と暗黒は時を変え、場所を変え、形を変えつつも、多元宇宙をその恐怖と苦痛で脅かし続けているのだ。
次元の構造・特徴
マトリョーシカ人形のように、9つの球体が入れ子になった構造をしている(参考)。それらは外側から、第一球層〜第九球層/The First Sphere〜The Ninth Sphereと呼ばれる。
表層~第一球層 | 機械によって模倣された自然(Mechanical Parody of Nature) |
第二球層 | 金属荒地と煙突(Metal Waste and Smoke Stacks) |
第三球層 | 金属パイプのからみあった進入不能地帯(Impenetrable Tangle of Metal Pipes) |
第四球層 | 溶鉱炉と戦士の訓練場(Furnaces and Warrior Training Grounds) |
第五球層 | ギラギラ光る油の沸騰する大洋(Boiling Ocean of Glistening Oil) |
第六球層 | ヨーグモスの側近たちの部屋(Chambers of Yawgmoth's Inner Circle) |
第七球層 | 処刑の領域(Punishment Sphere) |
第八球層 | 純エネルギー層(Pure Energy) |
第九球層 | ヨーグモスの聖域(Yawgmoth's Sanctum) |
- ファイレクシアの次元はダンテ・アリギエーリの『神曲』における地獄をモチーフにしており[2]、この9つの階層構造という点でも一致している。
登場カード
- 第四球層/The Fourth Sphere (次元カード):第四球層を次元カード化したもの。
参考
- ↑ Cards Up My Sleeve/私の愛したカードたち(Internet Archive)(Making Magic 2011年5月13日 Mark Rosewater著)
- ↑ The Rabiah Scale, Part 2/ラバイア値 その2(Making Magic 2018年11月26日 Mark Rosewater著)
- カード
- ストーリー
- 機械の始祖/Father of Machines
- ファイレクシアの油/Phyrexian oil
- ファイレクシアの紋章
- ファイレクシア病
- 新ファイレクシア/New Phyrexia
- 法務官/Praetor
- 重要人物
- ヨーグモス/Yawgmoth
- ギックス/Gix
- ケリック/Kerrick
- ダヴォール/Davvol
- ザンチャ/Xantcha
- ヴォルラス/Volrath
- グレヴェン・イル=ヴェク/Greven il-Vec
- ベルベイ/Belbe
- アーテイ/Ertai
- サーボ・タヴォーク/Tsabo Tavoc
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