オーバーキル
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オーバーキル(Over Kill)とは、デッキの構成やカードを評価する際に出てくる概念の1つ。直訳するなら「殺しすぎ」、もっと分かりやすく言うと「やりすぎ」。直接相手を敗北させる場合以外にも用いられることがある。
[編集] 解説
例えば、対戦相手のライフは通常20点であるので猛火/BlazeのXを100や100万にする必要性は薄い。そのような膨大な量のマナを出すことを目指すより、速やかにX=20の猛火を撃てるマナを出すことを目標にした方が良い(再供給ファイアや禍我シュート)。
無駄なほどの高威力は、その威力が増すほどに多くのリソースが費やされることを考えると非常に効率が悪く、そのリソースを別のものに向けた方がより確実に早く勝利できるはずである。つまり、オーバーキルになってしまうデッキ構成は無限コンボでもなければ避けるべきであるし、単体でオーバーキルなカードはコンセプトを重視したファンデッキでなければデッキに入れないほうがよい。また勝率を考えたとき、優勢な状態からさらに有利な状況へ持っていくカードを入れるよりは、劣勢な状況をひっくり返せるカードや、五分に近い状況から優勢に持って行くためのカードを入れたほうがよい。
マジックにおいては、具体的には以下のような考え方に分類できる(中でももっともよく使われる用法は1だろう)。
- カードの性能評価において
- 例えば焼尽の風/Searing Windは、10点もの威力の火力は確かに強力ではあるが、そのぶんマナ・コストが非常に重いため、強力さよりも扱いづらさのほうが目立ってしまっている。
- 例えばオドリックの十字軍/Crusader of Odricは、自軍が大量にいる(つまり自軍が有利な状況である)ことが前提のデザインである。このような「有利をより有利にする」カードは、「逆転される前に一気に勝負をつけられる」「五分五分の均衡状態を打破できる」という側面もあるものの、逆に「実はいなくても勝てる」カードであることも多々ある。
- プレイングにおいて
- 例えば、タフネス1のクリーチャーを火力で除去したい状況で、ショック/Shockではなく電撃破/Lightning Blastを使うのは「やりすぎ」であり、余計にかかった3マナと、他の対象に向けることができたはずの2点分のダメージを無駄にすることになってしまう。言わばアドバンテージを自分から捨てているようなものであり、結果的に不利を招くことになるわけである。
- デッキ構築において
ただしいずれの場合にも、メタゲームやデッキ構成、また個々の状況も考慮する必要があるので、絶対の基準は存在しない相対的な概念であることに注意が必要である。
- 上記のプレイングの例で言えば、巨大化/Giant Growthでタフネス4まで強化されても除去できるように、ロスを承知で電撃破で4点与えることが結果的に正解となる場合もあるだろう。
- 特に有名な例として、プロツアーシカゴ99の決勝戦が挙げられる。生命吸収/Drain LifeのXを残りライフぴったりの数値で唱えたために、剣を鍬に/Swords to Plowsharesのライフ回復で凌がれて逆転負けを喫してしまった。
- 混同しがちであるが、問題点は「効果が必要以上に高い」ことではなくて、そのせいで「実用性を損なっている」ことである。コストや使用条件が実用の範疇であれば、効果自体は強いに越したことはない。稲妻/Lightning Boltとショック/Shockが両方使用可能な環境であれば、前者より後者を優先して採用する理由はない。
- そういったカードのことはパワーカードなどと評する。例としては、歯と爪/Tooth and Nailや引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Tornなどが挙げられるだろうか。
- その「実用性」という評価もまた相対的であることに注意。リミテッドと構築、またスタンダードとエターナルなど、環境ごとにそれぞれ評価が変わってくるし、また新カードの登場・研究によって変化することもある。