オーバーキル
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オーバーキル(Over Kill)とは、軍事用語で「戦力の過剰投入」「過剰殺傷」の意。俗っぽく言えば「やりすぎ」ということ。
10人の兵士で十分な任務に100人の兵士を派遣するのは、90人ぶんの戦力や物資の無駄である。これを「戦力の過剰投入」と言い、軍学や兵法ではできるだけ避けるべきこととされる。この考え方はビジネスやゲームに広く援用されている。マジックにおいては、以下のような考え方に分類できる(中でももっともよく使われる用法は1だろう)。
- カードの性能評価において
- 例えば焼尽の風/Searing Windは、10点もの威力の火力は確かに強力ではあるが、そのぶんマナ・コストが非常に重いため、強力さよりも扱いづらさのほうが目立ってしまっている。
- 例えばオドリックの十字軍/Crusader of Odricは、自軍が大量にいる(つまり自軍が有利な状況である)ことが前提のデザインである。このような「有利をより有利にする」カードは、「逆転される前に一気に勝負をつけられる」「五分五分の均衡状態を打破できる」という側面もあるものの、逆に「実はいなくても勝てる」カードであることも多々ある。
- プレイングにおいて
- 例えば、タフネス1のクリーチャーを火力で除去したい状況で、ショック/Shockではなく電撃破/Lightning Blastを使うのは「やりすぎ」であり、余計にかかった3マナと、他の対象に向けることができたはずの2点分のダメージを無駄にすることになってしまう。言わばアドバンテージを自分から捨てているようなものであり、結果的に不利を招くことになるわけである。
- デッキ構築において
- 例えば、粉砕/Shatterのような用途が狭い呪文を大量にデッキに入れるのは明らかに「やりすぎ」であり、デッキ自体の機能性をゆがめることになる。
- 例えば、コントロール・デッキにおけるフィニッシャーと呼ばれるカードは、主に「終盤の最後のひと押し」として使用するものであって、大量に必要なものではない。ゆえに、フィニッシャー級のクリーチャーを大量にデッキに投入するのは「やりすぎ」で、むしろそれではデッキがまともに機能しなくなる。フィニッシャーは少数に抑えて、除去や打ち消しやドローと言ったサポートカードを多めに採用するのが基本となる。
ただしいずれの場合にも、メタゲームやデッキ構成、また個々の状況も考慮する必要があるので、絶対の基準は存在しない相対的な概念であることに注意が必要である。
- 上記のプレイングの例で言えば、巨大化/Giant Growthでタフネス4まで強化されても除去できるように、ロスを承知で電撃破で4点与えることが結果的に正解となる場合もあるだろう。
- 特に有名な例として、プロツアーシカゴ99の決勝戦が挙げられる。生命吸収/Drain LifeのXを残りライフぴったりの数値で唱えたために、剣を鍬に/Swords to Plowsharesのライフ回復で凌がれて逆転負けを喫してしまった。
- 混同しがちであるが、問題点は「効果が必要以上に高い」ことではなくて、そのせいで「実用性を損なっている」ことである。コストや使用条件が実用の範疇であれば、効果自体は強いに越したことはない。
- そういったカードのことはパワーカードなどと評する。例としては、歯と爪/Tooth and Nailや引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Tornなどが挙げられるだろうか。
- 加えて、その「実用性」という評価もまた相対的であることに注意。リミテッドと構築、またスタンダードとエターナルなど、環境ごとにそれぞれ評価が変わってくるし、また新カードの登場・研究によって変化することもある。