疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish
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クリーチャー — 人間(Human) モンク(Monk)
プロテクション(黒)
各終了ステップの開始時に、このターン疾風のデルヴィッシュが対戦相手にダメージを与えていた場合、その上に+1/+1カウンターを1個置く。
プロテクション(黒)持ちのクリーチャー。最初は小型だが、攻撃が通るたびに大きくなり、6回通れば計21点で勝利できる。
黒デッキにとっては頭の痛い存在。得意の単体除去が通用せずブロックすることもできず、これ1体に敗北することもあった。
初期サイズが小さいので基本的にはサイドボードから投入されることが多い。ただしステロイドのような、火力などでブロッカーを排除できるデッキではメインデッキから数枚採用されることもあった。時のらせんでの再録時にも、緑白ゴイフなどのサイドボードに採用された。
- +1/+1カウンターを置くのは終了ステップであり、戦闘ダメージを与えてすぐ置かれるわけではない。また、二段攻撃などで複数回ダメージを与えたとしても1個しか置かれないことにも注意。
- ミラディン・ブロックに登場したスリスの元となったカード。ただし、スリスは戦闘ダメージを与えた直後に+1/+1カウンターが置かれる。戦闘ダメージではないダメージを与えても+1/+1カウンターが置かれない点も異なる。
- 第4版で基本セットに再録されるが、色のバランスを取るため、白に怒れる群衆/Angry Mob、黒に忌まわしき者/Abominationが一緒に収録された(A Guide to Magic: The Gathering Fourth Edition(Duelist誌5号の記事))。
- 時のらせんでタイムシフトカードとして再録されるのに伴い、クリーチャー・タイプがそれまでのデルヴィッシュ(Dervish)から人間・モンクに変更された(デルヴィッシュは絶滅)。これにより、最古のモンクとなる。
- さらに次の次元の混乱にて、黒の砂丘乗りの無法者/Dunerider Outlawとしてタイムシフト。
訳語
「疾風のデルヴィッシュ」と訳されている「Whirling Dervish」について。
「whirling」は「回転している、ぐるぐる回っている」様子を表すほか、「(風のように)疾走する」意味もある。さらに意訳して「疾風の」としたとしても、その解釈にさほど問題はない。これはイラストとも矛盾しない(イラストの人物は回転しておらず、騎乗して「疾走」している)。
「dervish」は一般的に「(禁欲的な)イスラム教の修道僧、托鉢僧、踊る人」を意味する言葉(Wikipedia:ja:ダルヴィーシュ)。”聖職者”を意味する単語は宗教・宗派ごとに存在するため種類が多く、邦訳では将来的に一対一に対応しきれないという問題がある。そのため「デルヴィッシュ」と音写したのも筋が通っている。ファンタジーを題材にしたゲームでは職業をカタカナ表記するのは別段珍しいものではなく、初期のダンジョンズ&ドラゴンズの翻訳などでも、「デルヴィッシュ」としている例は散見される。
一方で歴史上の「Whirling Dervish」と言えばイスラム教神秘主義の一派である「メヴレヴィー教団(旋舞教団)」、またはその教団員のことを指す。現実世界の旋舞教団が多元宇宙/Multiverseに存在しているとは考えにくいため、これは一種のダブルミーニングであろう。
現実のイスラム教の宗派を表す「旋舞教団」という語を訳者の朱鷺田祐介氏が知悉していたかは定かではないが、アスキー社から発行のテーブルトークRPG雑誌「LOG OUT」(現在廃刊)掲載の田中としひさ氏の漫画「おこんないでね」に、このカードの和訳に悩む朱鷺田祐介氏の姿が描かれている。そこではこのカードの翻訳案について「『回る僧侶』ってまずくないっスか」と突っ込みを受けている。
上述のとおり回転せず走っているイラストで意味も取りづらく、文化的背景が異なるデルヴィッシュと僧侶を同じ訳にしてしまうと後に仏教文化圏をモチーフにした次元/Planeが登場した時に違和感を生じてしまうだろう。実際に神河/Kamigawaが登場してモンクが一大職業となったわけで、印刷時のクリーチャー・タイプが「Dervish」であったことを考えればカタカナ音写で独自性を保った「疾風のデルヴィッシュ」は訳者の腐心の作であることが見て取れる。適訳かどうかは意見の分かれるところだろうが、”誤訳”と断じるほどではないだろう。
- なおイスラム教は和名で「回教」と呼ばれるが、上記「旋舞教団」は無関係である。中国にこの宗教を定着させた回族に由来する。