渓間/Valley
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渓間(けいかん)/Valleyは、ブルームバロウ/Bloomburrowの地名。ブルームバロウの主な舞台となった。
概要
渓間はブルームバロウ/Bloomburrowという次元/Planeの中の小さな一地域だ。渓間は温暖な土地で、多様な野生生物が住まい、小さな沼や池から岩がちな丘や花畑に至るまで、多様な自然の名所がある。
ここを訪れた者がまず気づくのは、自然のスケールの大きさかもしれない。葉は森のように頭上にそびえ立ち、木々は都市一つを支えられるほど大きく、大岩は渓間の住民にとって山だ。
五つのバイオーム
渓間には、あらゆる種類の動植物を育む五つのバイオームが存在している。
草地
渓間の草地は、野生の花や褐色の草が生い茂るキャンバスだ。細く背の高いシロガネヨシやノコギリソウは、その下を通るアニマルフォーク/Animalfolkに屋根を提供し、太陽が頭上高く昇る頃であっても地面を涼しく保ってくれる。春と秋には、タンポポの種が空中を雪のように舞う。高い草の生えた一帯を分かつように、柔らかな日差しを浴びて茂るカモミールやパートリッジベリーの花でいっぱいの空き地が広がる。こういった小さな空き地には薬草がたくさんあり、地元のアニマルフォークは春から夏にそれらを収穫し、冬の間に乾燥させる。
アニマルフォークの農場は草地に多く、周囲の自然と繊細に絡み合っている。春と夏にはトマト、ピーマン、ネギの長い畝が畑にびっしりと並ぶ。渓間が寒くなってきた頃には、農作物はキャベツやハツカダイコン、ニンジンへと移り変わる。ベリー類は一年を通して育てられ、季節や特殊な環境に応じて様々な種類のものが生い茂る。
池
渓間には池が点在しており、アニマルフォークはその岸辺で農作業や釣りを行う。池の中にはスイレンの葉が敷き詰められているものもあり、半水棲のアニマルフォークが水浴びの途中で休むのに充分な場所を提供している。疲れた旅人は水を見るとほっとするものだ、近くに集落があるに違いないのだから。さらに大きな池は、渓間のすべての動物たちに澄んだ新鮮な水をもたらす。それが地下水路を通してであれ、商人が瓶に詰めて遠くに住む者に届けるという形であれ。
森からはるばる沼地まで、そして渓間の向こうまで長川(ながかわ)/The Long Riverが流れている。魚は渓間じゅうでよく泳ぎ回っており、それを捕らえるだけの忍耐強さを持つアニマルフォークにとっては栄養豊富な食料源となる。この川と池は繋がっていない――池は孤立していて雨水で賄われており、それに対し川は沼地へと続いていて、その源流は渓間の土地の遥か彼方にある。
渓間最大の池には噴水港/Fountainportがある。これは驚くべき職人技の産物であり、友人と会うにしろ池の向こうを眺めるにしろ、アニマルフォークにとって人気の行き先だ。
沼地
渓間の沼地は川の支流が涸れ始めるあたりに現れ、泥だらけの岸と岸の間に、沈泥と生物由来物質の床面を露出させている。背の高い草に覆い隠されたラットフォーク/Ratfolkの村の入り口があり、岸の側面のトンネルから遥か下方の地下洞窟へと伸びている。地面には捨てられたカタツムリの殻や骨が散らばっている。渓間じゅうの岸から流れ着いたものだ。
水面下に隠れていることも多いものの、この場所は生命で満ち溢れている。川岸は貝類の棲み処で、堆積物に覆われた岩の露頭に沿ってムール貝が育ち、川底には二枚貝が隠れている。ムール貝や二枚貝はときどき泥や沈泥を吐き出すが、これは厄介かつ時に危険な習性で、不運な通行人を泥まみれにしたり、宙を舞わせたりすることさえある。川岸に生えている植物の根は、水が涸れると露出し、澱んだ浅い水たまりが点在するグネグネした迷路を作り出す。昆虫もよく沼地を訪れ、餌となる栄養のある泥の中に卵を産みつける。
丘
渓間の傾斜した丘からはゴツゴツした岩の塊が突き出ており、一部のアニマルフォークには日陰を、この地に住まうリザードフォーク/Lizardfolkには日光浴の場所を提供している。このような丘のいくつかはかつて水で溢れていたため、岩は滑らかで高い形状に浸食されており、住民を四方から囲い込んでいる。高い影に遮られた光は地面にあまり届かないため、ここでは植生はまばらだが、岩の裂け目からは野生の花が芽吹き、木々は高い幹や太い根で大岩を支えている。
このような丘の頂上を下から見ることは難しく、特に小さなアニマルフォークは見れば驚きと感嘆を覚える。大岩の頂上まで登るには何日もかかるかもしれないが、登り切ったなら自慢の種になること間違いなしだ。
茂み
渓間の森は青々とした葉で溢れており、苔や蔓に覆われた木や岩の茂みを特徴とする。蔦は巣や家を隠して避難所を提供し、アニマルフォークの安全を守ってくれる。この地の樫の木は太く丸い幹を持ち、地面近くで又に分かれている。その節くれ立った姿は樹齢を物語っている。多くの木が何百もの季節を生きてきており、大きさもそれに見合うものだ。ここでは木々は巨大で、渓間じゅうから集まったアニマルフォークが共生する都市群が収まるほどだ。
川沿いの大きな森の端には、アニマルフォークの仲間意識の最高の功績たる三本木市/Three Tree Cityがある。ここは渓間で最も人口密度の高い場所で、あらゆる種類のアニマルフォークの住まいであり、旅人や冒険者にとっての主要拠点である。
地名
三本木市/Three Tree City
三本木市(さんぼんぎし)/Three Tree Cityは森と長川が接する場所にある大都市で、絡み合った三本の古木にまたがって築かれている。これは渓間最大の居住地であり、ありとあらゆる種類のアニマルフォークが暮らしている。ここの建物は最も小さなアニマルフォークから最も大きなアニマルフォークにまで対応しており、大きさの異なる出入り口、主要通路に沿った複数の小道、天井の高い公共施設を用いて調和のとれた環境を作り出している。栽培した棚型のキノコで作られたスロープや階段が、樹冠に至るまで木の側面に伸ばされている。
建築的には、三本木市はあらゆるアニマルフォークの様式の混ぜ合わせだ――あるものは素朴かつ愛らしいやり方で不器用に寄せ集められ、またあるものは空間と利便性を最大化すべく入念に設計され建設されている。
- 樹冠/The Crown - この都市で最も高い地点、梢よりも上にあるのは、冒険者、訪問者、観光客に待ち合わせ場所としてよく使われる遊歩道だ。頂上からは渓間全域を見渡すことができ、各地から集まったアニマルフォークがこの素晴らしい眺めに感嘆する。
- キルト地区/The Quilted District - この都市の中心、三本のうち最も大きな木の下にあるのは、都市でも極めて多様かつ密集した地域を見下ろす一枚のキルトの旗だ。この都市を訪れ、この都市に住むすべてのアニマルフォーク種が贈った断片が、そのキルトに縫い合わされている。
- 港湾地区/Docklands - 長川が三本木市沿いを流れる場所は港湾地区と呼ばれ、いかだ、桟橋、その他の浮遊構造物の広大な集合体となっている。
噴水港/Fountainport
渓間最大の池には噴水港/Fountainportがある。これは大きな多層構造物で、渓間の水域を航行する多くの船にとっての交易拠点であり港だ。その支配者はグラルブ/Glarbというカエルフォーク/Frogfolkの魔法使いの王で、その権威と権力は執行されるというよりはむしろ、示唆されるものである。アニマルフォークは村々への長旅の途中に、新鮮で冷たい水の中でくつろぐべくここに来ることができる。
この都市には様々なアニマルフォークが住んでおり、そのほとんどは水棲だ。王の命令の下、彼らはいつも祝宴を開いているように見える。最下層には大きな落とし格子があり、都市よりも下にある波止場への出入りを管理している。波止場はタッドプール/The Tadpoolの名で知られる騒々しい港湾地区に囲まれており、そこでは王やその配下の監視の目を逃れて取引を行うことが可能だ。都市の階層では住宅や商店が、必要時以外は繋ぎ留められることもなく、水に浮かんでいる。滑り台や滝は、各階層から下の層に行く手段を提供してくれる。最上層にはグラルブの玉座があり、スイレンの彫刻から伸びる水の彫刻に囲まれている。それは王の地位の象徴だ。
茨野原/The Brambles
渓間の居住地域は平和で穏やかだが、村や町を外れた人通りの少ない場所、あちこちの豊かな自然には、多くの危険が潜んでいる。このような地域は茨野原/The Bramblesの名で知られている。アニマルフォークは渓間から出ずとも、文化的聖地、太古の時代の失われた遺物が溢れる場所、あるいは存在すると噂されているだけの唯一無二の自然のバイオームを目指して、茨野原へ冒険することがある。最も勇敢で大胆な冒険者は、渓間の境を越えて旅に出る。果てなき魔力と多くの未知なる驚異を秘めた、災厄の獣/Calamity Beastの棲み処へと。
根の迷路/The Root Maze
ラクーンフォーク/Raccoonfolkは渓間のどこか、広大な根の迷宮の中に、すぐには使うことのない貴重な遺物のコレクションを収容してきた。編んだ根でできた分厚い屋根の下、いくつもの通路がゴミと宝物の集まりへと伸びているように見える。それは他のアニマルフォークにとって、ほとんど訳の分からないものだ。渓間やその先を冒険するラクーンフォークの放浪学者は、ここに隠された秘密に興味を抱く冒険者に喜んで道を教えてくれるが、正しい答えに辿り着くためには「自分の足を信じろ」と言われる可能性の方が遥かに高いだろう。
永久燃えの樫/The Ever-Burning Oak
渓間に住むリザードフォークの中には、自然に含まれる破壊力の古の象徴たる、一本のくすぶる樫の木を崇拝する者たちがいる。リザードフォークにとって、この木は創造と破壊、利用と再利用の循環の象徴だ。リザードフォークの若者はこの木のもとへと旅をし、木の中心からくすぶる燃えさしを素手で拾い集める。鍛冶屋はこの燃えさしを炉の燃料に使い、暗殺者はこの燃えさしを、リザードフォークの共同体ごとに製法の異なる陶器や金属やガラスの容器に入れて持ち運ぶ。その熱はやがて消えてしまうが、燃えさしの強力な魔法はリザードフォークのほぼ一生を通して続く――燃えさしが尽きたとき、リザードフォークは自分がもうすぐこの世を去るのだと悟るのだ。
英雄の崖/Cliff of Heroes
渓間で最も高い丘では、太陽が沈むことはないと言われている。その丘はあまりに高いために草もまばらで、木々ではなく大岩が丘の輪郭を形作っている。その中でもひときわ高くそびえる大岩がある。マウスフォーク/Mousefolkはこの岩に登り、自らの勇気と意志の強さに加え、チームワークと仲間意識をも証明する。経験豊富なマウスフォークの群れは団結してこの挑戦を素早くこなし、一方で若いマウスフォークはベテランの指導を仰ぎながら初めての登攀に挑む。大岩の頂上では、登る際に一緒に持っていけるものなら何でも使って、騒々しい祝宴が開かれることもしばしばだ。
災厄の墓場/Calamity Graveyard
広大なタールピットと斃れた災厄の獣たちの骨が、渓間じゅうでも最も危険な地形を作り上げている。リスフォーク/Squirrelfolkは、この世界を支えていると信じる生と死の原初の循環を礼拝すべく、定期的にこの地を訪れる。この場所はまた、渓間で屍術/Necromancyに用いられる骨の最高の供給源でもある。屍術師/Necromancerにここへと冒険し、褒美を持ち帰るだけの勇気があるならばだが。
茸の谷/Mushroom Valley
広大な谷は、自生する大きなキノコでいっぱいとなっている。谷底深くを流れる魔法の力線のためだ。ここでは色とりどりの菌類、食用に適さない植物、奇妙な昆虫が栄えている。リスフォークはこの地へと冒険し、危険な有毒植物を採取したり、菌類を栽培したり、強大な災厄の獣の遺骸を漁ったりする。
知識の納骨堂/The Knowledge Ossuary
沼地の中、その地下深くには、納骨堂/Ossuaryと呼ばれる知識と歴史の保管庫が数多く存在する。知識の納骨堂/The Knowledge Ossuaryは知られざる村にあり、この種のものとしては最も古く、強力なエンチャント魔法と、その中身の保護に命を捧げた戦士たちに守られている。ラットフォークの長老だけがこの納骨堂の中身を見る許可を出すことができ、許可が下りた場合であっても、閲覧者自身の安全のために、案内役が同伴する必要がある。
星界のクレーター/Crater of the Cosmos
黒曜石に覆われた広大なクレーターは、知られざる宇宙的な出来事の後に残された。夜が更けるとその表面に水が結露し、それによって頭上の天空が、クレーターの壁面すべてにプリズムのように屈折して映る。バットフォーク/Batfolkはこのプラネタリウムのような構造物の底へと冒険し、星界の反射を見つめ、宇宙の奥深くへと入り込み、月光を魔力に変換する。上空の天体の並びには、霊的な知恵も秘められている。それは夜空の永久の真理の中、祖先に加わり続けてきた歴代のバットフォークたちから受け継がれたものだ。
不吉な彗星/Fell Comet
渓間の地下深くにある池で、ラットフォークが崇拝しているのは、その重力で周囲の世界を歪めている、宙に浮かぶ彗星だ。複雑な洞窟網から水が漏れ落ち、この彗星の上や周囲を流れている。彗星を囲む水は枝分かれして凍りつき、真下に乾燥した氷の盆地を形成している。その盆地は試練場として用いられている。ラットフォークの若者は洞窟の中心へと辿り着き、氷の岩から一塊を切り出さなければならない。これは力の試練というよりも、狡知と創意工夫の試練だ。ラットフォークは倉庫から取り出したあらゆる道具を駆使して、この過酷な、暗く凍てついた洞窟に挑まなければならない。
光罠の尖塔/The Lighttrap Spires
危険な尖塔が果てしなく重なり合い、まるで短剣の束のように空を突き刺している。日に二回、太陽光と月光がそれぞれ尖塔の間を通り抜け、渓間に壮大な影を投げかける。この光はいくつもの鏡に当たり、尖塔に沿って散乱・反射し、尖塔群の中心に埋め込まれた巨大なオパール色の宝石へと流れ込む。ここで年老いたバットフォークは、起きている間の視界を、渓間を越えた領域の光景と交換する。その者の目はその後、星雲のような独特な模様で埋め尽くされる。これはその者が司祭の上流階級へと昇ったことを示すものだ。
燃え立つ沼/Burning Bog
燃え尽きることなくくすぶり続ける沼は、渓間の終わりと、その先にある謎めいた地の始まりを告げるものである。ここは危険で果てがないように見え、ラクーンフォークの若者は誰も、ここに旅立つ前には生き延びるすべを知らないが、切り抜けるために必要な技を学べると、彼らは本質的に信じている。ラクーンフォークの吟遊詩人はしばしばこの地のことを歌い、ここに住まう奇妙でこの世のものとは思えない生物についての物語を紡ぐ。このような物語がどれほど誇張されているかは、ラクーンフォーク以外の者たちには謎のままだが。
鉄の森/Forest of Iron
断層の上にある深い岩山には、リザードフォークの巡礼地が隠されている――鉄でできたトネリコの古木の森だ。その木々は今も成長しており、枝は鋭く尖り続け、一方で樹皮は酸化して錆びていく。この森は、鎧や武器に用いられる鉄の重要な供給源である。木が太ければ太いほど、中心部の金属は貴重で純度が高くなり、中心部を囲む「年輪」は不純物を多く含むようになる。最も古い木の芯は純粋な鋼だ!
花園/The Flower Garden
下草に守られた、人里離れた木立の中にある聖なる花園は、あらゆる年齢のラビットフォーク/Rabbitfolkがやってくる巡礼地だ。中心部へ続く曲がりくねった道は何世紀もかけて計画されたもので、最も重要なのは、訪れるラビットフォークが花を傷つけることが一度もないようにすることである。いずれかの花が枯れ始めたら、それを目撃したラビットフォークの巡礼者は誰であれ、花びらやその他の部位を集め、渓間に持ち帰って家に飾る。種は再び育ちますようにという願いを込めて、古い花が生えていた場所に植えられる。もし予期せぬ場所に花が育ってしまうと、この道は永久に変わってしまう。
空中庭園/Hanging Gardens
渓間のどこか、滝の裏に、一つのセノーテがある。その壁は水面に触れるほどに垂れ下がった蔓、苔、その他の葉で覆われている。浅い水たまりの水面にはスイレンの葉が思い思いに浮かび、太陽がセノーテの開口部の真上にある真昼には、カエルフォークが日光浴のためにやってくる。
古の苗床/Ancient Seedbed
渓間で育つ多くの種子の源であるこの苗床は、自然のままの未開の荒野であり、長きにわたって独特な野菜、果物、葉物が育ち、収穫できる場所であり続けている。ここで育つ食料の多くは渓間で育つものほど洗練されていないが、ラビットフォークは、ここで見つかる変種を持ち帰って他の品種と交配させ、収穫量や風味や大きさを改良するすべを学んでいる。
ヒマワリの聖域/Sunflower Sanctum
背の高いヒマワリが育つ、手入れの行き届いた聖域は、多くのアニマルフォークが寒い冬に備えて蓄えておく種子を調達する場所となっている。一部のアニマルフォークにとって、その高さから種を採るのは危険すぎるため、バードフォーク/Birdfolkが暑い夏の間にここの種の多くを持ち帰る。バードフォークはこの戦利品についていつでも気前が良く、こっそり木の高いところに保管して熟成させる自分たちの取り分を確保したうえで、最終的に渓間の他種族とヒマワリの種を分かち合う。
登場
登場作品・登場記事
- Planeswalker's Guide to Bloomburrow, Part 1/プレインズウォーカーのための『ブルームバロウ』案内 その1(Daily MTG 2024年7月11日 Neale LaPlante Johnsons著)