ナーセット/Narset

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2018年6月17日 (日) 19:16時点におけるAE (トーク | 投稿記録)による版
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ナーセット/Narsetタルキール覇王譚ブロックのキャラクター。カードとしてはタルキール覇王譚悟った達人、ナーセット/Narset, Enlightened Masterが初出。

目次

解説

タルキール/Tarkir出身の人間プレインズウォーカー/Planeswalker。女性。

歴史改変前

タルキールの氏族/Clanジェスカイ道/The Jeskai Wayカン/Khanイラスト)。

武術の達人にして学者および神秘家でもあるナーセットは、洗練された精神的鍛錬を行い、驚くべき身体的妙技を発揮する。若い頃を放浪の戦士として過ごし、他の氏族の文化をその目で見てきた彼女の実践的な知識は、大部分のジェスカイの学者の知識とは異なるものであり、指導者たる彼女の役に立っている。彼女はジェスカイの民の安全に気を配っており、普段はジェスカイの中枢、賢者眼の要塞/Sage-Eye Strongholdにて氏族を導いている。

長い黒髪を持ち、黄色の上着を身に纏う。額には龍眼/Eye of the Dragonの印が輝いている。

ナーセットはその内に「可能性」を秘めていると言う者もいる。その力、あるいは天命は、彼女をより大きな目的に向かわせるであろうと。だがこの時間軸では、最後まで彼女のプレインズウォーカーの灯/Planeswalker's Sparkが点ることはなかった。

歴史改変後

新たなタルキールの氏族、オジュタイ氏族/The Ojutai clanに生まれた「異端者」(イラスト)。

幼い頃から高い才能と知識への飽くなき渇望を有しており、オジュタイ/Ojutai自身にその才を見出され、彼の学徒となった[注釈 1]。しかしその渇望は彼女を隠匿された真実へ――彼女の師であるオジュタイが隠したタルキールの歴史の真実へと導き、その出来事が彼女のプレインズウォーカーの灯を点すこととなった。

  • 彼女が歴史改変によってカンからプレインズウォーカーに変化するという物語はデザインのごく初期に決定されており、これを前提として他の設定が作られていった[1]
  • 掌編で描かれた、自分の思考を言葉にすることが難しい、何もせずじっとしていることができないといった性質は、現実社会でいう「自閉症スペクトラム」ないしは「非定型発達」に当たるものだと公式からの言及がある[2]

経歴

悟りし者/Enlightened

幼い頃のナーセットは「問題」を抱えていた――いつも空想の世界を夢見ており、巻物の教科書に頭の中のイメージを描いては怒られ、心に口が付いていかず、同級生と話そうとしても言葉を探して口ごもるばかりであった。彼女は不安から逃れるために勉学に打ち込み、ジェスカイの教えを可能な限り覚えて教師たちを感心させた。時期が来ると彼女は放浪の戦士の道/Way of the Wandering Warriorを選択し、他の氏族の土地を巡り、彼らの文化を学んだ。彼女がジェスカイに帰還してから数年の後、長老たちは彼女をジェスカイのカンに任命した。しかし彼女は、カンとなった今でも自分が他所者であるような、いつも言葉を探していたあの頃の少女のままであるような気がしていた。

ある日ナーセットは賢者眼の要塞近くの東屋で、慣習に従ってジェスカイの僧たちとともに瞑想していた。瞑想に集中できずこっそり目を開けた彼女は、一人の少年と目が合った。彼は明らかに瞑想に退屈していた。ナーセットはその少年に舌を出して合図し、彼を驚かせた。瞑想の時間が終わり、彼女は伝統に則った文言を述べた。彼女は居心地の悪い思いをしていた――悟りの方法は各々が自分自身で見つけるものであり、私が曖昧な真実を授けるべきではない――しかし同時に理解もしていた、今のジェスカイは方向性を必要としているのだということを。

この後、彼女は一人で瞑想をするという決まりになっていた。最後の僧が退出すると、彼女は護衛兼監視役であるシンタン/Shintanの目を欺くべく、隠していた棒や瓜を用いて手早く人形を組み立て、自分と同じ衣服を着せた。彼女は東屋を抜け出し、要塞の地下へと向かった。古のたち、それを結束して倒した氏族、謎の龍ウギン/Uginの解読不能なルーン文字が記された賢者眼の年報/Annals of the Sage Eyeを読むために。

ナーセットが東屋に戻ると、そこにはアブザン家/The Abzan Houses追放されたオークたちと、彼らに捕らえられたシンタンの姿があった。人形はバラバラに破壊され、頭部の瓜には矢が刺さっていた。彼女は物陰から飛び出し、流れるような動きでオークたちを攻撃した。シンタンも隙を突いて拘束を脱し、ナーセットとともにすべてのオークを倒した。

彼らはテイガム/Taigam――ナーセットのかつての弟子であり、ジェスカイを捨ててスゥルタイ群/The Sultai Broodの一員となった男――に雇われた暗殺者たちであった。彼らの言い分によれば、これはナーセットがテイガムを暗殺しようとしたことに対する報復であるとのことだった。そのような事実はなかったが、ジェスカイの誰かがテイガムの暗殺を試みた可能性は否定できないと彼女は考えた[3]。シンタンはナーセットに告げた、貴女が瞑想の義務を怠っていたことを長老たちに報告しなくてはならないと。彼女は悪びれもせず返した、自分がここにいたなら、すでに頭に矢を受けて死んでいたであろうと。

シンタンは再びこのような刺客が来ることを恐れていたが、ナーセットは恐怖を見せなかった。皆が戦争に明け暮れるこのタルキールにおいて、暗殺など今に始まったことではない。彼女は今も夢見ている――幼い頃に思い描いていた世界を。

「きずな」への旅/Journey to the Nexus

日課である夜明けの瞑想を行っていたナーセットは、自らの心の奥底に潜り、ウギンのルーンと向き合っていた。彼女はこれを何ヶ月も続けていたが、ルーンの真髄に到達することは決してできなかった。だがその日は違った。静寂の中心で、彼女はある言葉のかすかな気配を捕らえた――「癒せ」。彼女は瞑想状態から脱し、山頂の雲間から現れた麒麟の姿を見た。彼女は理解した、麒麟の飛び去った先に世界の運命があることを。彼女はカンの代理を立て、旅に出た。

彼女はジェスカイの高山の麓で、謎の放浪者、サルカン・ヴォル/Sarkhan Volと出会った。彼女はサルカンの両眼を覗き込み、彼とは別の存在を感じ取った。ナーセットは彼こそが予言にある人物だと確信し、彼の話を聞いた。サルカンは語った、自分は内なるウギンの声に導かれ、「扉」を探し求めていると。幸いなことに、賢者眼の年報を熟読していた彼女は、ウギンの亡骸が眠る地――精霊龍の墓/The tomb of the Spirit Dragon――を知る数少ない人物の一人だった。タルキールを「癒す」ために、2人はともにその地を目指すことになった。

2人はカル・シスマ山脈/The Qal Sisma mountainsに入り、ウギンの眠る峡谷に辿り着いた。サルカンの内なる声は強くなり、彼の杖の面晶体/Hedronの欠片が脈動し、輝き出した。そこに突然、サルカンへの復讐に燃えるズルゴ/Zurgoが現れた。ナーセットは怒れるズルゴの拳を受け止め、ここは自分に任せて先へ進むようサルカンに言った。彼女は戦闘を優勢に進めたが、不意を突かれて剣の一撃を受け、鮮血を迸らせて地面に崩折れた。サルカンは怒りと悲しみに心を掻き乱されながら、きずな/The Nexusに現れた燃え盛る扉をくぐり、扉の向こう――その先に繋がる1280年前のタルキールへと旅立った。

大師の学徒/The Great Teacher's Student

1280年前のタルキールにおいて、サルカンはヤソヴァ/Yasovaニコル・ボーラス/Nicol Bolasとの抗争の末、ウギンの命を助けることに成功した。その事実によりタルキールの過去はすべて書き換えられ、運命は再編された。過去においてジェスカイはその名を捨て、オジュタイ氏族となった。サルカンと共にきずなを訪れ、そこでズルゴの一撃を受けて斃れたはずのナーセットもその運命の再編の例外ではなかった。

母親とともに市場にやって来た8歳のナーセットは、窮屈な市場に閉じ込められたような気持ちになっていた。彼女は母親に早く買い物を終えてもらおうと焦るあまり、誤って積まれた林檎を崩してしまい、市場の外に追い出された。晴れて自由の身になった彼女は、川のほとりで何者かの声を聞いた。それは遥か彼方の龍の眼の聖域/Dragon's Eye Sanctuaryに佇む龍王/Dragonlordにして偉大なる師/The Great Teacher、オジュタイ/Ojutaiの声だった。オジュタイは言った。私はすべてを知っている、学びたいと思う者には私は教えると。彼女はそれに応え、オジュタイの学徒になった。

それから3年間、彼女は荷物持ちという名目で母親の買い物に同行し、市場の外で待つ間にオジュタイの下で学び続けた。彼女は膨大な知識を吸収し、精神を研ぎ澄まし、数々の呪文を身に付けた。そして空き時間に肉体を鍛え、瞬く間に強くなった。しかし彼女はそれで十分とは思わず、いつかオジュタイの近くで学びたいと願っていた。オジュタイはそれに応え、龍語り/Dragonspeakerイーシャイ/Ishaiを遣わし、彼女を龍の眼の聖域に招いた。

ナーセットは龍の眼の聖域でさらに多くを学び、テイガムら聖域の学徒全員を瞬く間に追い抜いた。15歳にして、彼女はオジュタイが任命した最年少の師となった。それは栄光の瞬間であるはずだった――彼女は自分でも驚くことに、失望していた。頂点に到達したことで、彼女には学ぶべきものが何もなくなってしまった。

それから1年近くの間、彼女は知識を求める疼きと闘い続けたが、それは悪化する一方だった。彼女は山を降りることを決断した。下山の途中で、彼女は隠された書庫と古の巻物を発見した。彼女は無我夢中でそれを読み、真実を知った――かつて氏族を統べていたのはカンであり、龍王ではなかった。オジュタイは最古の龍ではなかった。彼女はコーリ山/Cori Mountain河水環/Riverwheel[注釈 2]の地下でも書庫を発見し、タルキールの真の歴史を学んだ。そしてとうとう、ダルガー/Dirgurの地下の書庫にて、クーアン/Quanの残した巻物を見つけた。彼女は「サルカン」の名と、カンたちの会談がオジュタイを含む龍の襲撃によって終わりを告げたことを知った。師の名を目にしたとき、彼女の心は衝撃に震え、彼女のプレインズウォーカーの灯が点った。彼女は新たな次元/Planeへ、さらなる知識と可能性を有する世界へ踏み出そうとした。だが最後の瞬間で彼女は思い留まり、タルキールに引き返した。なぜそうしたのか、自分でもわからなかった。

それ以来、彼女は自分自身を引っ張る力を常に感じ続けていたが、それに身を委ねることはなかった。代わりに彼女はタルキール中を巡り、あらゆる地を、あらゆる秘密を目にした。そして彼女は再び、あの川のほとりに立っていた。オジュタイの声が聞こえた。何を学んだのか、何を知ったのかと。彼女は自分は破門されたものだと考えていたが、それは間違いだったのかもしれない――オジュタイは今でも彼女の師であるのかもしれない。彼女は答えた、真実を学んだと。オジュタイは頷き、言った。先に進むがよい、学ぶべきものは常にあると。彼女はオジュタイに感謝の意を告げた。

揺るぎなき、そして気高き者/Unbroken and Unbowed

ウギンに会うべくカル・シスマ山脈を旅していたナーセットは、彼女を探していたサルカンと出会った。相手は自分のことを知っているようだったが、彼女はその顔に覚えはなかった。しかしその名前は知っていた――サル-カン/Sar-khan、「偉大なるカン」を意味するその名前は、遠い昔にウギンの命を助けたとされる龍人の名前であった。サルカンは迷った末、真実を語った。自分と自分の知る「ナーセット」は龍のいないタルキールに生まれたこと、その「ナーセット」が死んだこと、自分が時を遡って歴史を書き換え、今のタルキールとナーセットがあること。彼女は自分の読んだ隠された歴史が真実であったことを知った。

ナーセットはサルカンにタルキールの外へ旅立とうとした体験を話し、彼から、自分たちが「プレインズウォーカー」と呼ばれていることを聞かされた。彼女はウギンと話をし、それからアタルカ氏族/The Atarka clanの領土へ行き、噂に聞く、マンモスの象牙に刻まれた古の物語を探し求めるつもりだと話した。タルキールの外の無限の世界を旅する気はないのかと尋ねるサルカンに対し、彼女は答えた。いつかはそうするだろうが、この世界にはまだ多くの謎があり、今はまだここにいたいと。彼女が自分の知る「ナーセット」、何よりも知識を追い求める女性と同じであることを知り、サルカンは微笑んだ。

登場

登場カード

フレイバー・テキストに登場

タルキール覇王譚
賢いなりすまし/Clever Impersonator道極め/Master the Way
タルキール龍紀伝
過去に学ぶ/Learn from the Past神秘の瞑想/Mystic Meditation星霜のつづれ織り/Tapestry of the Ages

イラストに登場

タルキール覇王譚
物静かな熟考/Quiet Contemplation跳ね返す掌/Deflecting Palm
タルキール龍紀伝
過去に学ぶ/Learn from the Past

登場作品・登場記事

歴史改変前
歴史改変後

脚注

注釈

  1. プレインズウォーカーの解説ページには「空智/Skywiseの1体にその才を見出され、後にオジュタイに直接学ぶようになった」と書かれているが、ここでは掌編「大師の学徒/The Great Teacher's Student」の記述に従う。
  2. 「河水環」はジェスカイの地名であり、これは「氷瀑/Icefall」のことを指しているものと思われる。

出典

  1. Blogatog(Mark Rosewaterのブログ)
  2. A Voice for Vorthos(Doug Beyerのブログ)
  3. Taigam's Scheming/テイガムの策謀(Uncharted Realms 2014年10月1日 Matt Knicl著)

参考

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